第23話 焼き肉パーティー


 哀川さんも攻撃力も上がって喜んでいるみたいだな、顔が緩んでいるよ。


「隊長! 『挑発』スキルを使い慣れていないと、いざと言う時に使えませんよ!」

「そうですよ!隊長、試しましょう!」

「確かに、そうだな」


 哀川さんも武闘派なのか……僕のお供は終わったから解放して欲しい。


「えっと……僕は足手まといになりますから、ワープ・クリスタルまで送って欲しいです。今月は、買取り強化期間なので20階で狩りをして来ます」


 そうだ、ドロップ品を預かったままだ。


「ああ、分かった。東山君、ワープまで送ろう。手伝ってくれてありがとう」

「いえ、哀川さんの『スキル書』が出て良かったです。預かっているドロップ品を渡しておきますね」


 ドロップ品を渡そうとしたら、哀川さんはバイト代として受け取るようにと言った。


「ええ! 哀川さん、バイト代にしたら多いですよ!」

「東山君、安い位だよ。先日、東京のDEAで、初めて換金に出された『挑発』に30万の値段が付いた」

「「「ええっ!」」そんなにするんですか!」

「あっちは割と出ているから、『挑発のスキル書』としては妥当な値段だと思う」


 そんなに高額なのか。


「ある程度、JDAダイバーに行き渡ったら値段は下がるがね」

「そうですか……じゃあ、アルバイト代として、有難くもらいますね。ありがとうございます」


 上質肉が3つも貰えるのが嬉しい!



 そして、ワープ・クリスタルまで送ってもらい3人と別れた。僕は毒消しを狙って、20階へと飛んだ。そして、カエルを探しながら狩りをした。


 ダンジョンから出て、換金してもらうが毒消しは1個しか出なかった。


「お待たせしました。東山様、こちらが換金額になります」


 うお! 15万以上ある! こんなに貰っていいのか?


「はい、ありがとうございます。登録カードに入金して下さい」

「かしこまりました。東山様、掲示板に一般ダイバーのステータス値が公表されていますよ」


 白石さんが、にっこりと登録カードを渡してくれた。


「えっ、それは見ないと! 白石さん、ありがとうございます」


 帰りがけ、掲示板を見に行った。一般ダイバーのステータスの数値が貼り出されていて、企業の初心者講習参加者(有段者除く)の協力で調べた数値と書いてあった。


※初心者講習の三日目終了時のステータス


年齢  18歳~50歳(男性)

HP     45~100

MP     3~  7

攻撃力  40~ 56

防御力  40~ 53

速度   30~ 55

知力   10~ 56

幸運   30~ 60


※幸運はドロップに関係する。魔石に限り概ね幸運値の確率でドロップすると実証された。(アイテム・レアアイテムは調査中)



 おお! やっぱり、幸運はドロップに関係しているのか。じゃあ、僕の魔石のドロップは67%、少し高めの数値か。幸運値の高い人もいるな、その内に魔法が使える人も増えそうだな。


 DWAを出て寮に戻る。ドロップした上質肉を3塊持って返るが、これで先輩たちを誘って焼き肉でもしようかな。今日は、疲れたから食べて帰る。もちろん、中華の豪華バージョンだ。




 ドンドン!


「田中先輩~!」

「おう、東山。どうした~?」

「明日、焼き肉パーティーしませんか?」


 寮に戻って、先輩の部屋に行き上質肉の塊を見せる。


「今日も連れて行かれることになって、肉がいっぱい手に入ったんで明日の昼にでも焼き肉しませんか? 夜でも良いですけど」

「おお~! 東山君! 俺は良い後輩を持ったなぁ~。よし! みんなにビール持参だと言って声を掛けるぞ。明日の昼に集合だ!」



 翌日、田中先輩は寮の団らん室を借りてくれた。及川さんと太田さんは、それぞれビールを1ダースも持って来た。昼からそんなに飲むんですか?


「揃ったな、よし! 東山、肉を焼き始めるぞ~!」

「田中先輩、先に乾杯しましょう!」

「そうだな。じゃあ、乾杯するぞ!」

「「「「乾杯~!」」」」


 みんな、ホットプレートにどんどん肉を乗せいていく。野菜を焼くスペースはなく、肉で埋め尽くされている。


「「「「旨ーい!」」」」


みんな、缶ビールを片手に食べ始める。


「お前ら~、これが豚の味に思えるか!? 旨すぎる!」

「う~ん、マジで旨いな! 俺も取りに行きたいよ!」

「うん、美味しいですよね」


 みんな、旨いしか言わないな。1本目のビールを飲み終える頃、長谷川さんが通りかかるのが見えた。太田さんのダイバーパーティーである長谷川さんも独身寮に住んでいる。肉が余りそうだしな~。


 僕は、長谷川さんに声を掛けた。


「あっ! 長谷川さんもどうですか?」


 長谷川さんは、キョトンとして僕達を見た。


「良いのか?」

「はい。肉が多くて余りそうですし、良ければ食べて行ってください」


 後ろで、『余らないぞ!』と声がするけどスルーだ。3塊で6㎏だよ、絶対に余るよ。


「長谷川~、参加するならビールを持って来いよ!」

「よお! 長谷川、お前もダイバーとしてこの肉は食べた方がいいな! 目標になるぞ!」

「長谷川さん、このお肉食べないと損ですよ!」


 みんなから食べた方が良いと勧められ、田中先輩が早くビールを持って来いと催促するので、長谷川さんは慌ててビールを取りに行った。山田君も誘ってあげたいけど、彼は実家からの通いなので寮にはいないんだよな。



「じゃぁ、2回目の乾杯だ!」

「「「「「乾杯~!!」」」」」


 長谷川さんは、始めは遠慮していたけど、肉を口に入れた瞬間に目がカッと見開いた。


「んん~! 何だ! これは!!」


 はい。上質肉愛好家が一人増えました~。


 それからは、肉のせいかビールのせいか、長谷川さんも遠慮することなく肉の話で盛り上がった。



「長谷川~、今何階に入っているんだ~? 俺は~、20階で毒消しを~、集めているんだが~な、なかなか~出なくてな~」


 及川さん……ろれつが、怪しくなって来ていますよ。


「及川は、20階まで進んでいるんだな。俺は、佐藤課長と太田と一緒に進めているから、17階辺りだな。毒消しは確かに出にくいが、毎回2~3本は出るぞ」

「そうか~、3人~だと、効率が~良いのか~!」


 確かに、パーティー組む方が数を狩れば効率は良くなるな。


「長谷川~、太田のことを頼むぞ~! 俺は~、ダイバーじゃないから~、太田を助けられんからな~」


田中先輩も怪しい……昼からビールを何本飲んだんだ?


「田中さん、僕はね! いつも長谷川さんに助けて貰っていますよ!」


 そして、何故か田中先輩が、ダンジョンやダイバーについて熱く語り始めた……それを真面目に聞いている長谷川さんと太田さんがいる……みんな、かなり酔っぱらっているな~、みんなでワイワイ楽しいけどね。





  7月の第4土曜日。今日は、1人で普通にダンジョンに入れた。黙々とカエルを探して、毒消しを5本拾えた。これで、来月のJDAのダンジョン攻略に少しは貢献出来たかな?


「東山様、毒消しの換金ありがとうございます」


 今日の白石さんは、ふんわりウェーブの長い髪を後ろで束ねていて、いつもと違う雰囲気だ。どちらかと言うと、可愛い感じだったのが上品なお姉さんになっている。女の人って、髪型一つで変わるよね。


「いえ、今回は少なくてすみません。数は集まりました?」


 たしか前回は、ノルマがあるって言っていたよな。


「それが、今回も集まりが良くないので、買取り強化期間は見直しになると思います」

「え? そうですか……」


 今日の換金額は15万もあり、ソロ狩りの自己最高額だった。毒消しの5万は大きいな。見直すって言っていたけど、どうなるのかな。



 早いな~、ダイバーになって一年が過ぎたよ。ステータスも少しずつ上がって、強制的に連れて行かれなければ楽しくやっている。そして、登録カードの残高も200万を超えている! むふふふ。



名前  東山 智明

年齢   20歳 → 21歳

HP     52  → 177

MP     5  → 123

攻撃力  45  →  85

防御力  43  →  81

速度   36  →  80

知力   59  →  85

幸運   67  →  67

スキル  なし  →・片手剣C・盾C・火魔法C・挑発 



一年前と比べると、育ったな~。このまま、のんびりダイバーが出来たらいいな。寝屋川ダンジョンDでコツコツ狩りをしよう。








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