第13話 G.W. 20階を目指す
5月、ゴールデンウイークの5連休に突入した。早朝、ポーションとおにぎりを多めに持って寝屋川DWAに向かう。そして、高い方の装備をレンタルしてダンジョンに入った。
「さあ、20階を目指すぞ!」
気合を入れて、慣れた道を進んで行く。16階まではすんなりと進むが、ここから時間が掛かるだろうな。16階へ降りる階段で、安くてかさ張るアイテムをまとめておこう。荷物がいっぱいになったら捨てる用だ。そして、おにぎりも食べておく。
17階へ向かって最短距離を進むが、火魔法はオークだけにケチって使う。ランクCのオークは大きくて、魔法を使っても一太刀では倒せないから油断ならない……17階への階段に着くとステータスのHPを確認する。
名前 東山 智明
年齢 21歳
HP 137/158
MP 92/97
「このHPでポーションを使うのは勿体ないな。前に飲んだ時、36HPを回復したからな……まだ、行けそうだな」
17階は、地図を見ながら進むので時間が掛かる。まだ魔物の出て来る数が少ないので助かるが、18階への階段に到着した時には13時を過ぎていた。ここでもHPの確認をする。最近、声に出さなくても『ステータス・オープン』と、考えれば出るようになった。知力の数値が上がったからかな……?
名前 東山 智明
年齢 21歳
HP 118/158
MP 77/97
「HPが40減っている……まだ行けそうだけど、無理は止めておこう」
ショルダーバッグから、ポーションを出して飲んだ。……マズイ。これでHPはMAX回復した。口直しに水分を取り地図を見ながら休憩した。そして、18階に降りる。ここからは初めてだ……。
18階は、17階に比べて出て来る魔物の数が多くなった。シルバーウルフが同時に2体出て来た時には焦った~。片方のシルバーウルフの顔に火魔法を撃って、もう1体に斬りかかる。魔法の威力も強くなっているので難なく倒せたが、咄嗟の判断が遅れたら危ないな。
18階のフロアーを抜けて、19階へと続く階段に到着した時には16時前だった。ここまで来るのに2時間半ほど掛かっている。HPの確認も忘れずにしないとな。
HP 132/158
MP 47/97
「う~ん、結構減っているな……」
ポーションは飲まないで、スポーツドリンクを飲み少しだけ休憩をした。シルバーウルフの毛皮(1,000円)が増えてリュックがいっぱいになって来たので、狼の毛皮(300円)を数枚捨てることにした。勿体ないなぁ、アイテムバッグとかがあればいいのにな。
初心者講習でアイテムを放置すると消えると教わったが、実際に売れないゴブリンの武器を放置して、時間が経つと消えていたのには驚いた。だから狼の毛皮も消えるはずなので、迷路の小部屋に狼の毛皮を数枚捨てた。
19階から出て来る魔物が増えるだろうから要注意だと思っていたら、なんと、シルバーウルフは2体ペアーで出て来るようになった! 魔法を使わないと危ないので、シルバーウルフには出会いがしらに火魔法を撃つようにした。
20階に向かって進んで行くと、珍しく狩りをしているダイバーに出会った。僕より年上の背の高いマッチョなダイバーだ。向こうは狩りの最中だったので、一声かけて通り過ぎよう。左手を上げて、
「こんにちは。お先に進みますね」
向こうは狩りに集中しているので、気が付いていないかも知れないが……まぁ、取りあえずのマナーだよね。
「おう!」
返事が帰って来た。余裕だな……マッチョだしな。
やっと……20階へ続く階段に着いた。時計を見ると19:30を過ぎている。残りのおにぎりを食べながらHPの確認をする。
HP 99/158
MP 7/97
う~ん、MPが7か……火魔法が後1回しか使えない。20階のワープ・クリスタルまで、壁沿いを進むにしても心細いな。MPがないからHPを回復しておくべきか?オークかシルバーウルフのペアーが出て来たら……怖いな。ポーションを飲んでおこう。安全第一だな!
本日2本目のポーションを飲んだ。うぐっ……マズイ。
そう、そんな時に限って魔物は出て来なかった……そういう仕様ですか? マジでゲームみたいだ。
無事に20階のワープ・クリスタルに触れて1階に飛んだ。ダンジョンを出ると、すっかり夜になっていて、時計を見ると20:00を回っていた。帰りにビールと餃子だけ食べようと決めて、換金しに行った。
「東山様、お待たせしました。こちらが、換金額になります」
「おぉ! 登録カードに入金してください!」
サインをしながらビールは2杯にしよう! と思った。換金額が、76,000円なんて最高額だ! 頑張ったからな!
翌日は、昼すぎまで寝ていた。連休は後3日あるし、箕面ダンジョンCへ行ってみようか。実家から行くのが近いから、向こうに泊まってから行こう。そう思い立って、昨日取ったオーク肉を土産に持って行こうと、塊の半分を袋に入れて出かけた。
途中で遅い昼飯を食べて、実家のチャイムを押したら。知らない女の人が出て来た。
えっ? まさか……親父の彼女か?
「はい。どちら様ですか?」
「あの、親父いますか?」
「えっ! 智明さんですか? あっ、どうぞ入って下さい」
入って下さいって、僕の家なんだけどな……イラッとする。
「いえ、近くまで来たので寄っただけです。親父を呼んで下さい」
玄関まで入って、親父が出て来るのを待った。母さんの家に上げやがった……やばいイラついてきた……落ち着かないと……直ぐに親父が顔を出して、
「智明、上がらないのか?」
「ああ、近くまで来ただけだから……これダンジョンの土産を食べてもらおうと思って持って来たから食べて。じゃあ、行くわ……」
奥で女の人が様子を伺っている。
「まて、智明。話がある……」
親父は気まずそうな顔をしているが、話は聞きたくないな。
「親父が決めたんだから、好きにすると良いよ。母さんもいないしね。僕も好きにするから、もうここには来ないよ。親父、元気でね」
土産の肉を渡して、言いたいことだけ言ってその場を後にする。
「智明! 待て! お前……」
親父は引き留めて話をしたいだろうけど、僕に相談もなしに女の人を上げた、母さんの家にだ。好きにすれば良い。あぁ、こんな気分でダンジョンは嫌だな……寮に戻ろう。
次の日も部屋でダラダラと過ごした、結構ダメージを受けているなと思いながらオーク肉のステーキを焼いて昼からビールを飲んだ。
夜、及川さんが部屋に来て、
「東山! やっと出たぞ! 一緒に食べようぜ!」
「及川さん、オーク肉が出たんですね!お疲れ様です」
「おお! この喜びを分けてやるから、太田も呼んで俺の部屋に来い!」
昼からオーク肉を食べていたけど、今はみんなでワイワイするのが良いな。太田さんを呼びに行って、今から及川さんの部屋に集合だと伝える。僕は部屋に戻ってビールを持って及川さんの部屋に行った。
「おっ、東山! ビールを持ってくるとは、気が利くヤツだな!」
「6本しかないんで、足りなかったら買いに走りますよ!」
「僕、何も持って来なかったよ……」
太田さんが、申し訳なさそうに言うので
「僕が飲みたかったから、持って来ただけですよ。後で買い出しに行く時に、お金を半分出して下さいよ」
「ああ! そうするよ。ありがとう、東山君」
それから、すぐにビールが無くなり買い出しに行った。そして、その日は夜中まで飲んで騒いだ。
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