第14話 G.W 5/4日~


 及川さんの部屋で飲み会をした翌日、いつもより遅い時間だけどダンジョンに向かった。DWA支部で21~25階の地図も貰っておく。いつでも狩りに行けるように……


「東山様、21階へ行かれるのでしたら、カエルが出す毒消しを3本は持って行くことをお勧めします。21階からは、毒を持つ魔物が出てきますので、毒消しを持っていないと進めません」


 白石さんは、丁寧に説明してくれる。


「僕は、まだまだ21階には行けないですよ。白石さん、アドバイスありがとうございます」


 何でも21階からは、毒攻撃をしてくるポイズンスネイクがいるらしく、毒になったらその場ですぐに毒消しを飲まないと危ないらしい。そして、毒消しを1本飲んだら退却する目安だそうだ。なるほど、3本持って行って2本が保険なのか、一般人はそれ位慎重な方が良いかもな。



 受付でマップを貰った後、ダンジョンに入って真っ先にステータスを確認する。前回の20階のワープを取った後、見るのを忘れていたからね。『ステータス・オープン』


名前  東山 智明

年齢   21歳

HP   159/159

MP  100/100

攻撃力  76

防御力  73

速度   75

知力   75

幸運   67

スキル

・片手剣C ・盾D ・火魔法C


 おお! MP増えるのが早いな~。もしかして、僕は魔法と相性が良いのかな。


 20階にワープして、黙々と19階で狩りをする。3時間ほど狩りをして、階段で休憩をする。HPとMPの減り方気になるのでステータスを見た。


HP    81/159

MP   45/100


 HPの減り方が酷い……3時間でこんなに減っている……時計を見ると、13:00過ぎだった。う~ん、これでダンジョンを出るのも早いな……おにぎりを食べながらステータスを眺めていた。


 悩んだ末の結論は、『ポーションの最大回復量を調べる』の名目でポーションを飲むことにした。この前のワープ取りの時、2本目のポーションでHPがどれだけ回復したか見なかったからな。


「ゴクゴク……うぅ、マズイ……ステータス・オープン」


HP  131/159

MP   45/100


 おぉ、HPが50回復している!よし、調査終了だな。


 そして、更に3時間狩りを続けた。ダンジョンから出て、換金してもらったら6万もあった。6時間の狩りで6万とは、時給1万円! 途中でポーション(5,000円)飲んだけどね。今日は、久しぶりに回転寿司にでも行こうか。




 5/5ゴールデンウイーク最終日、今日も19階で狩りをすることにした。明日から仕事だから、早めに上がるには丁度いいだろう。ポーションを使わないように4時間ほど狩りをした。そして、1階へワープしてステータスを確認する。


名前  東山 智明

年齢   21歳

HP   46/161

MP  25/102

攻撃力  77

防御力  74

速度   75

知力   76

幸運   67

スキル

・片手剣C ・盾C ・火魔法C


 おお~! HPの残量は酷いが、スキルの盾がCに上がっている! やった!


 時間がまだ早いのでポーション狙いでスライムエリアに行くことにした。このHPを見たら怖いけど、僕の初めのステータスはHP52だったから、46もあれば2~3時間は余裕で狩れそうだな。


 2月のポーション買取り強化期間とは違い、ほとんど誰もいない。貸し切り状態だったので3時間ほどスライムを追いかけた。ポーションが2本手に入ったのが嬉しいな、最近在庫が減って来たからな。


 夕方、ダンジョンを出てDWAの受付に向かった。白石さんが誰かと話しているのが見えた。


「なあ~、白石~。毒消し売ってくれよ~」

「ダメですよ。後藤さん、毒消しは本部扱いだって知っているじゃないですか。カエルを殴って来ればいいじゃないですか」

「もちろん殴ったが、3日間殴って1本しか出ないんだ~! 毒消し3本はないと30階に潜れないだろ~。潜れないと、スキル上げが出来ないだろ~。白石~、頼むよ~」

「後藤さん、諦めてください。スキル上げなら、他のダンジョンに行けばいいじゃないですか」


 あれ? あの人、19階ですれ違ったマッチョなダイバーさんだ。30階に潜る? 凄いな。立て込んでいるようだから奥の受付に行こうか。通り過ぎようとしたら、困った顔の白石さんに声を掛けられた。


「あっ、東山様。少しよろしいですか?」

「はい。白石さん、何ですか?」


 白石さんに呼び止められ、マッチョなダイバーさんと目が合う。


「ん? 君は、この前19階ですれ違ったな。俺は後藤、JDAダイバーだ。よろしくな!」

「はい、僕は東山と言います。よろしくお願いします」


 JDAのダイバーだったのか、マッチョなのも頷ける。白石さんが、申し訳なさそうに話し出した。


「東山様、今から換金ですか?」

「はい。そうですが、立て込んでいるようなので奥の受付に行こうかと……」

「あぁ、すみません。……ところで東山様、今日は何階で狩りをされました?」

「19階ですけど?」


 初心者エリアの狩りは言わなくてもいいよね。


「おお! もしかして、東山君! 毒消しは出たかい?」

「はい、出ましたけど……」

「おおお! 俺に売ってくれ! 頼む! この通りだー!」


 後藤さんは、両手を合わせて必死にお願いしてくる。


「別にいいですけど……」

「東山様、彼に換金額のの値段で売ってやってください」

「ええ! 倍なんてとんでもない、通常の買取り価格でいいですよ。2本しかないですけどいいですか?」


 白石さんは無茶なことを言うけど、JDAのダイバーに倍の値段なんて貰えないよ。僕から買わなくてもDWAから買い取ればいいのに……。


「な、何!! 2本も出たのか!? レアの毒消しを2本も出すなんて! 東山君、君は何者だ?」

「何者って言われても、普通のダイバーですよ。のんびりと狩りをしています。でも、後藤さんはJDAなのに、どうしてDWAから買わないんですか?」


 僕らより優先で買えるんじゃないのか?


「東山君、毒消しとかポーションの薬系のアイテムは買えないんだよ」

「はあ~。後藤さん、ちゃんと理解しているじゃないですか! 東山様、攻略で使うアイテムは、本部で確保することになっているんです。薬類は売りださないんですよ。スタンピードが起きた時に急に集められないですからね」


 白石さんが言うには、換金された毒消しやポーションは、一部支部に保管されて残りはDWA本部に送られるそうだ。買えないのか~、手元にいくつかキープして正解だったな。


「東山君は、毎日ダンジョンに入っているのかい?」

「いえ、僕は会社員なので週一ですね。だいたい土曜日に入っています」

「そうか! また毒消しが出たら俺に売ってくれ! 頼む! 毒消しがないと30階に潜れないからな~」

「後藤さんは、30階に入っているんですか。凄いですね! 毒消しを売るのは良いですよ。JDAの方ですしね。白石さん、後藤さんに売っても良いんですよね?」


 白石さんも、そのつもりで声を掛けたんだろうしね。


「はい。東山様、お手数をおかけします」


 後藤さんに毒消しを2本売って、それ以外は白石さんに換金してもらった。連絡先を交換したけど、後藤さんは体育会系? 熱い人だったな……。


 豪華バージョンを食べて帰ったら、田中先輩が帰って来ていた。


「東山~、土産だ」

「田中先輩、ありがとうございます」


 東京土産の定番、果物の形をした洋菓子をもらった。


「ところで、東山。俺がいない間に、及川たちと焼き肉パーティーしたそうじゃないか~?」

「田中先輩、それは及川さんが念願のオークを……」

「東山、俺も食べたかったな~」

「うぅ、及川さんに言ってくださいよ……」


 誰だよ! 田中先輩にオーク肉を食べたことを言ったヤツは……






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る