第12話 4月 第1週~


 4月の第1土曜日、高い方の装備をレンタルして16階を目指す。8時にダンジョンに入って、16階に着いたのが10時半頃。早く来られるようになったと自分を褒めながら、今日は17階まで進み狩りをした。今日は、オーク肉が3個も手に入った! 今回の毒消し2本は売ったので換金額は45,600円。鼻歌が出そうだ。


「東山様。毒消しの換金ありがとうございます。こちらのアイテムもレアとなっておりまして、なかなか換金されないアイテムなんですよ」


 白石さんはポーションの件以降、良く話しかけてくれるようになった。


「そうですか。僕には、まだまだ必要ないアイテムです」


 みんな21階まで進んでいるんだな。毒消しなんて21階に行かないと使わないし。それとも、箕面ダンジョンCでも使ったりするのかな?



 週明け、食堂で食べていると及川さんが聞いて来た。


「東山、ダンジョンCの開放はしたのか?」

「はい。開放はしましたけど、箕面ダンジョンには行ったことないですよ。及川さんは開放するんですか?」

「ああ、第二期は4月から開放するって書類を貰ったから、一応しておこうかと思っているが、魔石の数が足りないかもな」

「僕の時は、ステータスが足りませんでした……今は足りていますけどね」


 及川さんは、野球をやっていただけあって体格が良いから、ステータスは余裕にクリアーしているんだろうな。



 第2土曜日、寝屋川DWA支部に行くと白石さんが声を掛けてきた。


「東山様! おはようございます。お知らせがあります」

「おはようございます。白石さん、何ですか?」

「はい。この度、ダンジョンCを開放されているダイバーの方を対象に、他府県のダンジョンを開放することになりました。こちらが詳しい書類ですのでお渡ししますね」

「へぇ~、他府県のダンジョンに入れるのか」


 海の近くのダンジョンに入ったら、海の魔物とか出るのか? ダンジョンによって魔物やドロップする物が違うなら面白いな。試しに箕面ダンジョンに行ってみるべきかな?


「はい。DWA限定ですけどね。それで、今回も希望者対象なのですが、東山様にも是非開放して貰おうと思いまして! 今回も、登録カードをお預かりしても宜しいですか?」


ええっ、書類は今もらったばかりなのに……


「ええ? 審査とかないんですか?」

「東山様には、ポーションの件で助けて貰っておりますので問題ありません。哀川さんにも許可を頂いております」


 えっ、許可? ポーションのお礼かな?


「そうですか、ありがとうございます」


 白石さんは笑顔でそう言って、僕の登録カードを持って行った。


 まあ、いっか。貰った書類に目を通すと、他府県開放の条件は、①ダンジョンC開放してから1か月以上経過しているダイバーが対象。②ステータス値が、HP100以上・攻撃力と防御力が70以上あること。あぁ、今回は両方クリアーしている。


「東山様、手続きが終わりました。これで、DWAのダンジョンCとDでしたら入ることが出来ますので、他府県に行かれた際には試してみて下さい」

「白石さん、ありがとうございます」


 登録手続きが終わりダンジョンへ入る。今日は16階で3時間ほど狩りをしてダンジョンから出た。まだ明るいので時計を見ると、夕方の5時前だった。今夜は外食しないで、オーク肉を1個持って返って部屋で食べることにした。



 第3土曜のダンジョンでは、16階で長く狩りをすることが出来た。ランクDの魔物が一振りで倒せるようになって、移動時間が短くなったからだ。これは、頑張れば20階に行けそうな気がして来たよ。連休に20階のワープ・クリスタルを目指そうかな。




 恒例の飲み会で、及川さんがダンジョンCの開放をしたと報告があった。


「及川さん、開放おめでとうございます。次は他府県のダンジョン開放ですね!」

「何! 東山、他府県のダンジョンも入れるようになるのか!?」


 あれ? まだ、貼りだして無かったのか?


「はい、そうですよ。ダンジョンC開放後、1か月過ぎたら書類を貰えると思いますよ。ダンジョンC開放が、最低条件ですから」


 及川さん、実家が奈良だから奈良のダンジョンに入りたいだろうな。


「おい、東山。お前あちこちのダンジョンに入っているのか~?」

「いえ、田中先輩。他府県も開放しましたけど、箕面ダンジョンすら行ったことないですよ。僕には、寝屋川ダンジョンだけで手一杯です」


 他のダンジョンは、もう少しステータスを上げてからかな。


「ええ? 東山君、どうして他府県まで開放しているの?」

「えっと、成り行きで…? 開放しても、問題ないと言われたので……」


 そう聞かれると困るな……特に何も考えていなかったな。今日は、太田さんのツッコミが厳しい。


「成り行きって何だ!? 東山、希望者のみじゃないのか?」

「はい、そうなんですけど……」


 及川さん、本当に成り行きなんです。あぁ……この話から解放して欲しいな。


「ところで、お前らゴールデンウイークはどうするんだ? 俺は、東京のアキバで癒されて来るぞ! 東山! 寮にはいないからな。何かあったらメールしろよ~」


 先輩、話を変えてくれてありがとうございます!


「田中先輩、分かりました。お土産を待っています!」


 東京か~、遊ぶなら良い所だよな。僕の趣味はダンジョンになってしまったけど。


「田中さん、俺はダンジョンですよ。オーク肉を取るまで入り浸るつもりです」


及川さんはオーク狙いか~。取るまでって、意気込みが凄いな。


「おお! 良いな~。及川、肉が取れたらステーキ1枚分回してくれよ~」

「及川さん、僕も欲しいです!」

「フフフ、任せておきなさい!」

「及川さんは、もう16階まで進んでいるんですね」


 及川さん、頑張っているな~。あのオーク肉の味を知ったら頑張れるよな。


「太田と東山~、お前らは? ゴールデンウイークどうするんだ?」

「僕は、講習前なので筋トレを頑張ります!」


 太田さんは真面目だ。企業の講習は、G.Wが終わった後の平日にあるそうだ。有給を使わないのは羨ましいけど、課長と一緒なのは気を遣うよな~。


「僕は、気合を入れて、20階のワープを通しに行こうと思っています」


 そう、僕はG.Wの連休でワープを取るつもりだ。


「東山、無茶はするなよ~」

「東山が20階のワープを通したら、次は俺だな」

「東山君、気を付けて」

「はい」



 月末の祝日は、いつも通り16階で狩りをした。16階で4時間狩りをして、1階で今月末のステータス値を確認する。


「ステータス・オープン」


名前  東山 智明

年齢   21歳

HP  142/158

MP   5/97

攻撃力  75

防御力  73

速度   74

知力   74

幸運   67

スキル

・片手剣C ・盾D ・火魔法C


 おおお! スキルの片手剣と火魔法がCに上がっている! いつの間に上がったんだ! これは嬉しいな~。ん? 21歳? あぁ、誕生日過ぎていたな。今日は、祝いに豪華バージョンを食べようか。


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