第11話 2月 2回目の祭日~
2月の2回目の祭日、今日はスライムエリアに行く予定なので、初心者用の装備を借りる。ポーションがなかなか出ないせいか、ダイバーの人数が明らかに減っていた。
前回と同じく2~4階で狩りをして、ポーションが3本出た。今回も受付の白石さんに凄く喜ばれた。
「東山様、本当にありがとうございます。これで、25本集まりました」
「えっ、25本って今月のトータルですか?」
白石さんは、にっこり答える。
「はい、東山様。これでも他のDWA支部に比べると集まっているほうですよ」
そうなんだ……幸運の値が良い人は少ないのかな。まぁ、数をこなさないとドロップしないだろうけど。
白石さんが言うには、寝屋川DWA支部としては30本買い取りたいらしい。ポーションの集まり次第で、来月攻略するダンジョンをCにするかDにするかが決まるそうだ。そして、ポーションが出るダンジョンの支部は、買取りノルマがあるそうだ。それ、僕が聞いてもいい話なのかな?
月末恒例の飲み会で、うちの工場で希望したのは誰かという話になった。
「企業ダイバーの人数は、3人だったよな~。申し込んだ5人の内の3人は分かるが、後2人は誰だろうな~」
「えっ! 田中先輩、誰が希望しかた知っているんですか?」
「ああ、まず太田だろ~、それと長谷川と山田は申し込んだと聞いたな」
長谷川さんは、及川さんと同期で山田君の教育担当。そして、及川さん以上に体格が良い。背も高くて、元バスケ部らしい。山田君は僕と同い年の同期で僕より細くて背も低い。
「田中さん、長谷川は選ばれそうですね。山田なら太田だが、後2人が誰かだな。太田、もっとアピールしておけよ!」
「はい! 及川さん、事務所で筋トレしているって毎日アピールしておきます」
後2人が分からないけど、長谷川さんは決まりみたいだな。
飲み会翌日の土曜日、スライムエリアに行くつもりなので初期装備をレンタルした。1階から入ってスライムエリアを移動するが、祭日と同じで人は少なめだった。黙々とスライムを探して狩りをする。8時間狩りをして、ポーションは3本出た。
「これで、ダンジョン攻略の手伝いが出来たかな」
ダンジョンの攻略で使うポーションの内、8本は僕が取ったポーションになるんだから満足だよ。そうだ、2月最終のステータスを確認しておこう。
「ステータス・オープン」
名前 東山 智明
年齢 20歳
HP 128/136
MP 40/73
攻撃力 72
防御力 70
速度 71
知力 72
幸運 67
スキル
・片手剣D ・盾D ・火魔法D
今月は、MPが上がったな。初心者エリアでどこまで上がるか調べてみたいけど、時間が勿体ない。来月はオーク狩りを頑張ろう。肉がもう無くなったからね……
ダンジョンを出て受付で換金してもらった。もちろん、今日ドロップした3本のポーションも出した。
「東山様! 本当にありがとうございます。これで、29本! 後1本で目標達成できます。う、嬉しい……」
「ええ? あれから、1本しか増えていないじゃないですか……」
「はい、昨日の時点で諦めていましたが、東山様のお陰で後1本! これで希望が見えました」
29本でも30本でも変わらない気がするけど……ノルマだと違うのかな? はぁ~、仕方ないな。バッグにキープしているポーションを1本出そうか。出しても残り6本あるしね。
「白石さん、出ない可能性も大いにありますよね? これ、僕がいざという時の為にバッグに入れてあるポーションです」
そう言って、バッグからポーションを1本取り出して渡した。
「ええっ! 東山様、宜しいのでしょうか?」
「はい、どうぞ。これでノルマ達成でしょ? 僕の分は、また来月取りに行きますから大丈夫です」
来月の飲み会後のダンジョンは、ポーション集めにしよう。
「東山様……ありがとうございます! これで、寝屋川支部のノルマが達成出来ました!」
「はい。白石さん、ノルマ達成おめでとうございます」
白石さんが、とても喜んでくれた。ふふ、良いことをしたな。今日は久しぶりに中華の豪華バージョンを食べて帰ろうか。
3月に入り、第三回ダイバー募集が始まった。応募期間は3/1~31まで。今回の一般募集が90名、企業30社(×3名=90名)を4月下旬に発表して、5月から初心者講習が始まるそうだ。ダイバーが一気に増えるな。
昼休み、食堂でいつものメンバーで食べていた。
「太田さん、第三回の一般ダイバー募集にも応募するんですか?」
「東山君、もちろん応募するよ! 筋トレも頑張っているしね!」
太田さんの気合の入りようが凄いな。ふと田中先輩を見ると、難しい顔をしていた。
「田中先輩、難しい顔をしてどうしたんですか?」
「ああ、東山。うちの企業のダイバーの申し込み者が、後2人分からないって言っていただろう?」
「言っていましたね。え? 先輩、誰か分かったんですか?」
田中先輩、ずっと調べていたのかな。
「俺もそれとなく聞いて回ったけど誰か分からなかったのに、田中さん分かったんですか?」
「「誰ですか?」」
僕と太田さんの声が重なった。田中先輩は、周りを見渡してから小声で言った。
「一人は……課長だった。これは確定な」
『『『えええ!!』』』
「お前ら! 声がデカい!」
「「「すみません…」」」
びっくりした! 管理職がダイバーなんて、普通はないだろう。課長は確か結婚していたはず……。
「あと一人は、たぶんもっと上の役職で、却下されたと思う。だから、希望者は4人になっている。で、企業枠は内定している」
『『『えええー!?』』』
『お前ら! うるさい!』
「「「……」」」
役職がダイバー希望なんて驚きだ! 田中先輩の情報網は凄いな! う~ん? これって、ほぼ太田さん決定じゃないのかな? 課長と長谷川さんと太田さんで決まりだよな。
「僕、決まりそうですよね!」
「太田~、絶対はないから一般ダイバーを申し込んでおけよ」
「田中さんの言う通りだぞ! 太田、明日にでも申し込みに行けよ」
「はい! 今日、仕事終わりに行ってきます!」
「太田さん、決まりそうですね!」
太田さんが選ばれそうで良かった。頑張っている人を見ると応援したくなる。
3月の第1土曜日、オーク肉狙いで16階へ向かう。徐々に移動時間も短くなって来た。道を覚えたのと、剣のお陰だな。ただ、16階はオークが1~2体しか出て来ない。今日もオーク肉は1個しかドロップしなかった。もう少し、移動時間が短くなったら17階に行こうかな。
ダンジョンから帰ると、寮の団らん室のTVでDWAの攻略のニュースが流れていた。昨年スタンピードが起こった、四国の高知ダンジョンDの攻略に成功したと報道されていた。
「おおお! 凄いな~、攻略が成功したんだ!」
DWAの攻略専門の部隊が最深部まで辿り着き、ダンジョン・コアを破壊したと報道が流れていた。
ダンジョン・コアを破壊すると、魔物の発生が無くなり活動停止になるらしい。そして、ダンジョンが崩壊していき、ただの洞窟になるそうだ。
第2土曜と第3土曜で、レアの毒消しが5本になった。これは寮の部屋に並べて、後1本バッグ用に取れたら売ろうかな。換金額が3,000円と良い値段だしね。そして、登録カードの残高も90万を超えた。これはマジに嬉しい!
翌日、職場で企業ダイバーのメンバーが発表された。佐藤課長と長谷川さんと太田さんだった。昼休み、太田さんは念願のダイバーになれるから凄く嬉しそうだ。週末に、DWAの申し込みをキャンセルしに行くらしい。太田さんずっと笑顔だし。ふふ。
「月末の飲み会は、太田の祝賀会だな」
「太田! 良かったな!」
「太田さん、おめでとうございます!」
「皆さん! ありがとうございます!」
お祝いを何かしたいな~。あっ! 良いことを考えた。居酒屋にお願いしてみよう。
恒例の飲み会、今日は太田さんのお祝い会だ。
「では! 太田のダイバー選出を祝って、乾杯!」
「「「乾杯~!!」」」
太田さんは、凄く嬉しそうでニコニコしている。良かったな~。乾杯が終わって料理が来た。僕がお店に頼んだオーク肉のサイコロステーキが来た! そう、早めに来てオーク肉のステーキを焼いてもらうように頼み込んだ。もちろん、料理代金を別に支払ったよ。
「太田さん! 僕からのお祝いのオーク肉です! 店に無理を言って焼いてもらいました。凄く旨いから、お祝いにピッタリだと思って食べてみて下さい!」
「「「なんだってー! オーク肉だと!」」」
みんなの顔色が変わった! そうだよな~、興味あるよね!
「あはは! 気になるでしょー!? あのオーク肉ですよ? 食べてみたいでしょ?」
みんなには、もう僕の話は聞こえていないようで食べ始めている……
「「「旨~~い!!」」」
「あははは! 旨いでしょ~!」
「東山! 良くやった! さすが俺の弟子だ!」
田中先輩の弟子って、まぁ……先輩は僕の教育担当だけど。
「おい! 東山、これ何階で出るんだ? 蜂蜜の次の目標を探していたんだ!」
「及川さん、16階から出て来るオークが落としますよ」
及川さんが、追い抜いて行かないと思ったら蜂蜜狩りをしていたのか。
「僕も、東山君みたいに頑張ってオークを倒せるようになろう」
みんなに、お代わりはないのかと言われたけど、そのサイコロステーキ1㎏もあるんですよ? 十分でしょ……。
翌日のダンジョンは、のんびりポーション集めをした。ポーション買取り月間も終わって、スライムエリアはすっかり人が少なくなっていた。ポーションは3本ドロップしたけどキープ用なので、換金額は1万いかない。だから、今夜はラーメンだけにする。
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