第6話 魔法のスクロールとワープ
火の魔法かな? 覚えられるか試してみようか。ダメだったら売ればいいし、きっと高く売れるはずだ!
安全地帯の階段に移動して、魔法のスクロールを広げる。そして、教わった通りに手をかざして集中する……すると、直ぐに魔法のスクロールが反応して浮かび上がり、吸い込まれるように手の中に消えた。
「うおっ! 消えた! 覚えたのか? ステータス・オープン!」
名前 東山 智明
年齢 20歳
HP 63/101
MP 14/15
攻撃力 58
防御力 55
速度 62
知力 65
幸運 67
スキル
・片手剣D ・盾D ・火魔法F
おおー! 火魔法を覚えている! やったー! 落ち着け、落ち着け……魔法を使ってみたいけど、先ずはワープだな。
マップを確認して、階段を下りて壁沿いを右手に進む。魔物を倒しながら進むと、開けた場所にキラキラした乳白色の大きなクリスタルがあった。高さ3メートルほどあるだろうか……その迫力と存在感に見入ってしまう……
「うおお~! あれが、ワープ・クリスタルか!」
ワープ・クリスタルに近づいて、両手で触れると何かが伝わって来た……これが魔力か? 目を瞑って1階へワープと考えると、浮遊感を感じた。慌てて目を開けると、小さな部屋に飛ばされていた。
「うわっ! 凄いな……」
ここは1階なのか? 部屋から出て進むとダンジョンの入口に続いていた。あれ? こんな場所に部屋なんてあったか? 講習でワープ部屋は、ワープを通さないと見えないと言っていたけど、どういう仕組みになっているんだ? 不思議だ……。
まだ少し早い時間だったので、魔法の検証を兼ねて1階でスライムを探した。スライムを見つけたが、どうすればいいのか分からない。講習で、魔法の使い方は教えて貰っていないな。
「これどうやって使うんだ? ファイヤー、とでも言うのか?」
手に違和感を覚えて、慌ててスライムに手を向けた。すると、小さな火の球がスライムに向かって飛んで行った。
ボワッ、ヒュ――バァン!
「おおお!」
あれだな……『魔法は、イメージが大事』ってヤツだな。続けて、今度は無言で魔法を試してみる。2回使うと、もう撃てなくなった。スライムがまだ倒せていないので、向かってくるスライムを剣で倒してしまう。そして、ステータスを見ると、
名前 東山 智明
年齢 20歳
HP 59/101
MP 4/15
1回にMPを5ポイント使うのか。最大3回しか使えない……こうなると、MPが増えて欲しいな。
もう魔法を試せないので、少し早いがダンジョンを出ることにした。DWA支部へ行き、ドロップ品を換金してもらった。
「東山様、こちらが換金額になります。宜しければサインお願いします」
「はい、今日も登録カードに入れてください」
「かしこまりました」
あぁ、ついでにマップを貰っておこう。
「そうだ、白石さん。10階からのマップが欲しいんですが、貰えますか?」
「東山様、10階のワープを取られたのですね。おめでとうございます。こちらが、10~15階のマップになります」
「あっ、ありがとうございます」
きっと、第一期30人の最後のワープ獲得者なのに……おめでとうと言われるのは恥ずかしい。
換金額は、27,400円だった。十分だな。今日はワープも取れたし頑張ったから、ビールも飲もうかな~。ラーメンに餃子とビール、なんて贅沢なんだ!
「東山~! また、何やら嬉しそうな顔をしているな!」
週明け、田中先輩に絡まれた。デジャヴかぁ……って、いうか僕、どんな顔をしているんだ? 母さんにも隠しことは出来なかったが……。
「田中先輩、彼女は出来ていませんよ。何の出会いもないですよ」
「東山、残念なヤツだ……お前、顔は悪くないんだから頑張れよ!」
残念なヤツじゃないですよ! ステータスの幸運は良いし。ポーション出るし、魔法のスクロール出たし……もしかして、ダンジョン内限定の幸運なのか? はぁ~、頑張れって言われてもなぁ。
「ところで田中先輩、そろそろ第2回の通知がある頃ですよね?」
「うむ。東山、2人が落ちていたら、恒例の飲み会で慰めてやるんだぞ。優しくな!」
「は、はい」
月末恒例の飲み会、及川さんが満面の笑顔だ。おお! 反対に太田さんが、沈んでいるように見える。う~ん。
「さて、乾杯するか!」
「「「はい。」」」
「「「「カンパーイ!」」」」
乾杯後、すぐに田中先輩が2人に確認する。
「それで……及川が通って、太田はダメだったのか~?」
「はい。田中さん、俺は初心者講習の案内が来ましたよ!」
「及川さん、いいな~。僕はダメでしたよ……。東山君が通っているから僕も行けると思ったんですけどね……」
太田さんがそう思うのも分かりますよ……僕はある意味、母さんのコネでダイバー登録出来たから……。
「太田、落ち込むなよ~。また、応募すれば良い話だろ~」
「太田さん、企業の方がまだ発表されていませんよね?」
「東山君、そうだけどね……」
及川さんが、太田さんの肩をガッツリ掴んで、
「太田! お前の分も俺が頑張るからな! お前は次回の募集も応募しろ! 諦めるな! 通るまで応募すればいいじゃないか!」
「はっ! 及川さん、そうですよね! 何度でも応募すればいいですよね! 僕、諦めませんよ!」
及川さん、体育会系のノリだよな。
◇◇
飲み会の翌日のダンジョンは、4階でのんびりスライム狩り。火魔法のスキルも上げたいけど、魔法は3回しか撃てないからな~。時間が掛かりそうだ。
「ステータス・オープン」
名前 東山 智明
年齢 20歳
HP 94/106
MP 0/19
攻撃力 58
防御力 55
速度 62
知力 65
幸運 67
スキル
・片手剣D ・盾D ・火魔法F
おっ、HPとMPが上がっている。MPはなかなか上がらなかったのに、魔法を使えばMPが上がりやすくなるのかもな。
今日は、ポーションを3個も売ったので、受付の白石さんにとても喜ばれた。本当は7個出たけど、保険に4つはキープしておく。手持ちのポーションが7個になった。これだけあれば、いざという時に足りるだろう。
そして、登録カードの入金額が40万! 貯まった! にやけて来るよ。
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