第21話 スキル書3
ポーションをのんで、HPを回復しておいた。そして、休憩が終わって今度は29階で狩りを始めた。2人は、猿とハイオークが出て来たら『挑発』を試している。いや、遊んでいる。
「使い慣れていないと、いざという時に使えないからな!」
「そうね! 後藤の言う通りだわ!」
「……」
それにしても、2人とも強いな。息が合っていると言うか、連携している所とか見事ですよ。見ているだけでも勉強になるけど、遥か上の強さで僕には真似できないな。
2時間ほど狩りをした後、少し休憩をした。水分補給しながらHPをチェックする。『ステータス・オープン』
HP 160/173
MP 52/119
手長猿の投石を上手くかわせるようになって来たので、HPの減り具合はマシになった気がする。
「東山君、MPはまだあるかい?」
「はい、後藤さん。魔法は後10回ぐらい使えますよ」
「凄いわね。東山君のMP量って多いのね。メンバーに魔法を使えるヤツがいるけど、10回も使えないわよ」
「魔法によって、消費するMPが違うのかも知れませんね。僕の魔法は、低ランクの魔法でMPをそれほど使わないんだと思います」
ゴブリンが落とした魔法だし、消費MPも少ないんだと思う。それと、魔法を使うとステータスの知力が上がっているから、この数値も関係しているのかもな。元々、攻撃力より高かったしね。
「ねえ、東山君。魔法1回の消費MPを聞いても良い?」
「良いですよ。1回、5MPです」
「「えっ!」MP50以上あるってことか……」
あっ! MPが分かってしまうのか……はぁ~、僕は甘いな。
「東山君、そろそろ狩りに戻ろうか」
「はい、後藤さん……」
「ふふ。東山君、気にしなくても大丈夫よ。MPの多い人が周りに少ないから驚いただけよ。私のMPは10もないしね」
神田さんは気遣って自分のMPを教えてくれる。良い人だ。
「神田の言う通りだよ。ただ、魔法を使えるダイバーは少ないから、ドロップ品を研究開発する企業から、『わが社のプロのダイバーになりませんか?』って勧誘が来たりするそうだ。ちなみに、俺もMP10ないぞ~」
「勧誘ですか……」
プロのダイバーって、自由がなさそうだ。後藤さんも良い人だな……2人はいわゆる、武闘派(脳筋)タイプ? 僕も初めはMP5だったけど、魔法覚える頃にはMP10以上あったな。
狩りを始めて、2人は楽しそうに『挑発』を試している。そろそろ、ダンジョンを出ようとワープに向かうと、又、クリスタルを遮るようにハイオークが出て来た。
「また、ここで出て来たな~。東山君、よろしく」
「近くにハイオークが湧くポイントがあるのかしら?」
「そうかも知れませんね。はい、魔法を撃ちますよ」
ボワッ、ヒュ――バァ――ン!!
二人が、同時にハイオークに向かって『挑発』をかける。後藤さんが先に袈裟切りし、神田さんが止めを刺した。倒れたハイオークが消えて、そこにスクロールが現れた。
「「「えっ!」」」
なんと、本日2つめの『スキル書』が出た……そうだよな~、ゲームでも欲しい時には出なくて、要らなくなったら出るんだよな~。
「「「……」」」
これは……、換金するのか?
「東山君、出しすぎよ……」
「ええ! 神田さん、僕ですか……?」
後藤さんが『スキル書』を拾って僕に渡す。
「ふむ。これは、東山君の物だよ」
「そうね。せっかく出たんだから、東山君も覚えたら?」
「ええ! 僕には勿体ないですよ。そうだ、哀川さんは『挑発』を持っていますか?」
二人とも、ギョットした顔で僕を見た。
「哀川隊長もまだ持ってはいないが……今日、東山君を30階に連れて来たことがバレてしまう……」
「そうね、哀川隊長に見つかるのは困るわ。東山君が覚えてくれる方が助かるんだけど……」
「後藤さんが渡せば分からないんじゃないですか?」
「いや、絶対にバレる! 頼む! 東山君が覚えてくれ」
「はぁ、分かりました……」
今日、僕と30階に来ていることは、哀川さんに知られない方がいいんだな。でも、白石さんからバレていると思うけど……3人でダンジョンに向かうのを見ていたから……。
ソロの僕が覚えるのは勿体ないと思う。魔物の取り合いとかしないしね。
仕方ない、『スキル書』の中央に手をかざして集中する……『スキル書』は反応して浮かび上がり、吸い込まれるように僕の手の中に消えた。
「東山君も『挑発』を試して見る?」
「いえ、ソロの時に弱い魔物で試してみます」
こんな所で『挑発』を試すなんて自殺行為だよ。ゴブリンに相手をしてもらいます。
ダンジョンから出て、DWAに入ると哀川さんが仁王立ちしていた。ほら、バレていますよ。哀川さんの顔は微笑んでいるけど、あれは怒っているよね……。
「お前ら、有休まで使って何をしているんだ?」
ええ! 土曜は休みじゃないんだ。ほぼ毎週、後藤さんと顔を合わしているけど、有休無くなってしまうんじゃないのか?
「哀川隊長……あの、これは……」
「うぅ……」
2人とも困っている。僕が幸運のことを言わないでと、お願いしているから弁解するのも難しいんだろうな……僕が、田中先輩を真似てみよう。
「哀川さん、すみません。僕が、上質肉を欲しいとお願いしたんです。先週貰ったのが凄く美味しくて、お世話になっている職場の先輩に渡したくて。後藤さんと神田さんに、無理を言ったんです」
この程度では誤魔化せないだろうけど、僕が嫌がっていないと分かれば、哀川さんもそんなに怒らないだろう。
「後藤、神田、そうなのか?」
「「はい! 哀川隊長」」
「2人のお陰で、上質肉が取れましたよ。助かりました」
ここで哀川さんに見つかるなら、『スキル書』を使わずに渡せば良かったよな。哀川さんも欲しいと言ったらついて行くよ。僕をダイバーにしてくれた人だしね。
今日の換金額は19万もあった! 2人が6万ずつで残りを僕にと言われた。上質肉は全部で4個も出たので1個ずつ、そして後藤さん達から哀川さんにも1個渡して欲しいとお願いした。一般ダイバーの僕からは受け取れないだろうしね。
コンビニでビールとサラダを買い、寮に帰って食べることにした。上質肉の塊を四等分して、先輩たちに配った。
「田中先輩、今日でお供は終わりなので、もうこの肉は手に入らないですからね。味わって食べて下さいよ」
「おう! 東山、ありがとな~」
みんなに配り終えて、部屋で上質肉を焼いて焼き肉のタレで食べた。ダンジョンから出た後のビールは凄く旨い! 肉が旨いから余計にビールが進むよ。プッハ~
来週からは19階辺りで狩りだな。もう後藤さんは、毒消しは必要ないだろうから換金できる。買取り強化期間に参加しないとね。あぁ、でもポーションの在庫が少なくなったから、ポーションを補充しておきたいな。
週明け、3人からお肉の礼を言われ、太田さんのオーク狩りの話を聞いた。企業ダイバーは、それぞれ3人でパーティーを組んでいるようで、進みが早いらしい。
「16階は、僕達だけかと思ったら、数組のパーティーが狩りをしていたんですよ。みんな、オーク狙いで……」
企業ダイバーで、オークの取り合いをしていたそうだ。こういう時に、魔法か『挑発』があれば有利になるんだろうな。
「3人だと、やっぱり倒すのが楽なんだな。東山なんて、しばらく5階だったのにな~」
田中先輩、僕の狩場の話を出さなくてもいいのに……。
「はは、そうですよ。及川さんが講習を受ける頃に、10階のワープを取るのを頑張ったんですから」
「一人だと時間かかるよな。俺も、20階まで時間かかったよ。東山、30階のワープを取る時は手伝ってくれよ。まだ先の話だけどな」
「はい、良いですよ。でも、今の僕のステータスだと手伝う所か足を引っ張るから、もう少し先の方が助かります」
僕のステータスは、及川さんより低いと思う。
「えっ! 30階までに出て来る魔物はそんなに強いのか!?」
「今回、僕はほとんど攻撃していないんですよ、守られて付いて行っただけです。僕、及川さんより弱いですから」
期待されても困るし、本当のことを言っておかないとな。
「そうなのか。直ぐにじゃないから、その時は頼むな。ところで太田、今後の狩りはどうなるんだ?」
「はい、及川さん。16階で慣れたら20階のワープに向かうそうです。もうすぐ、及川さんに追いつきそうです。」
太田さんは、ニコニコと答える。
「太田~、無理やり20階って言わないだけ良かったな~」
「はい、田中さん。長谷川さんも、戦闘中に助けてくれるので良かったです」
太田さんは、3人パーティーに慣れて来たのかな? 顔つきが明るくなって、楽しそうに話している。
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