第35話 堺ダンジョン10階のボス戦

 

 10階のワープ・クリスタルからボス部屋までは30分も掛からなかった。ここのボス戦をクリアーしないと11階へは降りられない作りになっているらしい。


 ボス部屋の前に着くと、及川さんが振り返って一言。


「よし! 作戦会議だ!」


 初めてのボス戦だ! 格下のオークなので気持ちにも余裕がある。ワクワクして来た!


「オークが3体だったら、1体ずつだ。2体だったら、俺と東山が戦う。太田は魔法でフォローしてくれ」

「分かりました!」

「僕は、オーク1体ですね」


 ドキドキしてきた……。


「みんな、入る前にHPの確認をしておくように。減っていたらポーションを飲むこと!」

「「はい!」」


 違う! 僕は、回復魔法を使えるんだった。勢いで返事をしてしまったよ。


「あ! 僕、HP回復魔法のスキル上げをしたいから、魔法を使わせて下さい。HPが増えているか、確認はして下さいね」


 みんなに『ヒール』を掛けた。『ステータス・オープン』


名前  東山 智明

年齢   21歳

HP   217/217

MP  124/169


 よし! 大丈夫だな。


「東山、ありがとな~」

「ありがとう、東山君。僕も『回復魔法』を取りに行こう」


 みんなHPの確認が終わり、ボス部屋前に集まる。及川さんが、岩で出来たボス部屋の扉に手で触れると音を立てて扉が開いた。


 ゴォ、ゴォ、ゴオ――


 3人で中に入ると、洞窟になっていて、一本道があるだけだった。振り返ると、扉は開いたままで閉まる気配はない……


 良かった。ボス戦を失敗しても逃げることが出来そうだ。


「よし、行こうか!」

「「はい!」」


 一本道を奥へと進んで行くと、僕達に気が付いたのかオークの叫び声が聞こえて来た。


『ブガアァッ! グウオオォォ~!!』

『グアァ~! ブオオォォ~!!』



 一本道の先は大きな部屋になっていて、中央に2体のオークが見えた。


「2体だな。俺は右。東山、太田、行くぞ!」

「はい、僕は左」

「僕は、魔法でフォロー!」


 部屋に一歩入ると同時に、及川さんと2人で中央のオークに突っ込んで行った。オーク2体が、及川さんを見たので、左に『挑発』を入れようとしたら、先に太田さんが火魔法を撃った。


ボワッ、ヒュ――バァ――ン!


『ブオォ! ブオオォォ~!!』


「こっちを向け――!『挑発』」


 魔法攻撃を受けて、太田さんの方を向いた左のオークに、『挑発』を入れて突っ込み、剣を振り下ろした。


『ブオォォ……』ドサッ、


「東山、今の何だ? 後で教えろよ」

「え? ……はい」


 及川さんを見ると、既にオークを倒していて笑ってこっちを見ていた。あぁ、詠唱しなくても発動するのに、声に出していたな。


 そして、オークが消えると部屋の中央に宝箱が現れた!


「「「おお~! 宝箱だ!」」」


 3人で近寄ってまじまじと見る。思っていたサイズより大きくて、ゲームや漫画で出て来るようなやつだ!


「待って! 開けるのは、ちょっと待ってください! 写真を撮りたいです!」

「太田さん、僕も!」

「そうだな! 記念に撮るか!」


 3人で宝箱を囲んで記念撮影をした。あはは! 楽しい。


 そして、誰が開けるかと言う話になって、みんな開けたいだろうからと、3人一斉に宝箱を開けることになった。


 及川さんの声に合わせて宝箱を開ける。


「いくぞ! 1・2・3!」


パカッ!


「「「おお~!」」」


 及川さんが、宝箱から戦利品を取り出した。魔石が1個、オーク肉、オークの斧、そして、赤い実!


「オークの斧はゴミだな。後は……」

「あっ! 攻撃力アップの『赤い実』が出ていますよ! これ換金に出したら200万ですよ!」

「「200万!」凄いな!」

「オークションサイトでは、もっと高値が付きますよ!」


 太田さんの話によると、この実を使うとステータスが1~3ランダムで上がるそうで、オークションでは高値が付くそうだ。ステータスが高い人程上がり難くなるから、攻撃力・防御力が上がる実は特に高値が付くそうだ。


「おっ、見ろよ。あっちに道が出来ているぞ」


 及川さんが指し示す方向を見ると、行き止まりの部屋だったはずが、壁にぽっかりと穴が空いて道が出来ていた。


「「えっ、」いつの間に……」


 戦利品のこともあるので、今日は進まないで帰ることにした。あの先に草原エリアがあるのか……次回のお楽しみだな。


 ダンジョンから出て話し合った結果、戦利品は全て換金して3等分することになった。素人がオークションサイトに手を出して、トラブルになったら面倒だと言う話になったからだ。


 個人の戦利品なら好きに出来るけど、職場の3人のだしね。そう言えば、『欲を出すと痛い目に合うよ』と、言われたことがあるな。


 おお~! 全て換金して220万程になった。それを3等分して、それぞれの登録カードに入金して貰った。


 帰りは、もちろん打ち上げをすることになり、田中先輩も誘って、いつもの居酒屋でばかり頼んだ。


「「「「乾杯!! ゴクゴク……」」」」


 プッハ~、ダンジョン後のビールは何て旨いんだ~!


 僕は及川さんに『挑発』のことを聞かれたので、寝屋川ダンジョンのハイオークの話をした。及川さんは、『俺も取りに行く!』と、来週からハイオーク狩りを目標にするそうだ。


「お前ら~、来週も堺に行って俺にご馳走をしろ~」

「田中先輩、「「割り勘ですよ!」」」

「何~! お前ら、高い料理を注文するな~!」


 あはは! 3人の堺ダンジョンは、大成功で終わった。





 第2週の中頃、TVで新しく出来た福岡の久留米ダンジョンが、攻略されたと報道されていた。今回のダンジョンは自衛隊の演習場に出来たらしく、一般人の怪我人はなかったとキャスターは言っている。


 一般人は、なんだ……。後藤さんに『お疲れ様でした』のメールを送った。


ブウゥ――、ブウゥ――、


 『東山君、ありがとう! 近いうちに飲みに行こう!』と、すぐに返信が来た。ふふ。




 第2土曜日、1泊する予定で箕面ダンジョンに土魔法を取りに来た。10階にワープしてメイジを探すが、同じ魔法書狙いのダイバーが何人かいたので9階へ行った。


 9階も……多いな。仕方なく8階に行く。黙々とメイジを探して、夕方頃、やっと『スキル書』が出た。


「やっと出た……」


 その『スキル書』の模様は見たこと無い形をしていた。写真を撮ってから、『スキル書』に手をかざす。そして、『スキル書』は僕の手に吸い込まれた。


 お~! 覚えた! 『ステータス・オープン』


名前  東山 智明

年齢   21歳

HP   207/219

MP  166/173

攻撃力  91

防御力  89

速度   88

知力  112(+5)

幸運   67

スキル

 ・片手剣C ・盾C ・火魔法C ・挑発 ・水魔法C

 ・風魔法C ・回復魔法E ・土魔法F


 知力が5上がって、土魔法を覚えている! やっとだ……これで4属性揃った!



 ダンジョンから出ると、すっかり日も暮れていた。換金を済ませて、ビジネスホテルへと向かった。


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