第28話 毛利、暗躍する!

 授業後、久菜は中庭の中心になって演説を行っていた。今日はアキラも七夏もいない。たった一人で大きな声を出していたが、そんな久菜の声に耳を傾ける人はいなかった。


 いや、それだけならまだいい。アキラのやったことに腹を立てているのか、心ない生徒の中には罵声を浴びせるものもいた。それでも久菜は笑顔を崩さず、必死に演説を続ける。その健気さは悲壮感すら漂わせていた。



「これで決まったな」



 二年一組の教室の窓から、そんな久菜を覗いている人物が二人。生徒会選挙での久菜のライバル、毛利ハジメと小早川吹雪であった。



「生徒会選挙に関しては確実でしょう。しかし、ここで手を緩めてはいけません。上月久菜は今かなり弱っているはず。この機に完膚なきまでに叩きのめすのがよいかと」


「吹雪はなかなかえげつないことを言うな」


「これも毛利家の繁栄のためでございます」



 ビラを渡そうとして手を弾かれる久菜を見て、ハジメはほくそ笑んだ。これ以上悲惨なことになるというのか。ぜひ見てみたい。ハジメの嗜虐心がうずく。



「面白い。やれ」


「はい」



 吹雪はうしろを振り返った。そこにはハジメと吹雪をじっと見つめていた男が一人。包帯をぐるぐる巻きに包み込んだ体、二メートルはあろうかという長身、そして包帯や制服の上からでもわかる筋肉……。



「虎、聞いていましたね」


「……ああ」



 そんな男、吉川虎之助は短く返事をした。



「今晩、仕掛けましょう。あなたには期待していますよ」


「……任せろ」



 毛利ハジメ。

 小早川吹雪。

 吉川虎之助。



 三人は肩を並べて二年一組の教室から出ていった。最後に三人は同時につぶやく。



『すべては、毛利家のために』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る