第二幕 うら若き貴女の悩み
第10話 うら若き貴女の悩み①
『屋上に来て、今すぐ』
12月17日。もうすぐホームルームの時間だというのに、貴女は恋人である御形薺に呼び出される。
『もうホームルームが始まる。嫌だ』
『ダーメ。緊急事態なのです。来なさい』
貴女は断ろうとするが、彼女から送られてきた可愛らしいスタンプに折れてしまう。
「ねぇ、ちょっと」
「は、はいッ! 何でしょう」
貴女がいきなり話しかけてきたせいで隣に座っていた女子生徒は驚嘆。頬を赤らめ、声は上ずる。
「ちょっと野暮用で席を外すから、先生に聞かれたら適当に誤魔化しといてくれないか?」
「え、ええ。大丈夫です」
「ありがと」
にこりと笑う貴女を見て、惚ける女子生徒。
そんな女子生徒には目もくれず、貴女は教室を走り出る。
股下90センチと日々鍛えられた健脚から繰り出される脚力は一瞬にして周囲を置き去りにして、屋上までひとっ飛び……とはいかず、貴女はあと数段で屋上の扉というところでその足を止める。
全力で200メートル以上走って息が上がっていたからだ。いくら体力に自信があるからと言ってその距離を息切れなしで走れるわけがないし、息も絶え絶えな状況だと恋人に格好がつかない。
30秒休んでようやく息が元のペースを取り戻してきた。
満を持して登場しようとドアノブに手をかける。
ドアノブを回したは良いが、貴女は開けなかった。貴女を屋上に呼び出した本人である彼女の他にもう一人、しかも男子生徒がいるようだ。
ドアに耳をたてるも、鉄製なのもあってうまく聞き取れない。
「それじゃあ、本人に聞いてみよっか」
彼女の声が聞こえた瞬間、携帯電話がメッセージを受信する。
『入ってきて』
彼女からだ。
貴女はドアを開けて屋上へ。
そこにいたのは、案の定男子生徒。
予想外だったのは、それが貴女の幼馴染である四月一日亞生だったことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます