第26話
凛歌はビクビクしながらもゆっくりとお姉様の後を歩く。さらにその後ろを私が付いていく。
応接室に入ると既にお母様が座っていた。応接室の準備を手伝っていたお姉様の側使えたちも壁際に並んで立っている。私たちがお母様に促されてソファーに座ると、一人ひとりの前にお茶が出される。
凛歌を連れてきた男も席についているのを確認したお母様は人払いをした。側使えや護衛は一部の人だけ部屋の前で、待機をするために残り、それ以外は解散していった。
部屋の中の人が減って緊張が少し和らいだのか凛歌が少しだけ顔を上げた。そして、ゆっくりと部屋を見回している。途中で私と目が合い、一瞬驚いた顔をする。恐らく自分と同じ顔、同じ姿をした私に驚いたのだろう。凛歌はまだ、私たちが双子だってことを知らない。その上さっきまで下を向いていたため私のことを今初めて見たのだ。つまり、さっきの私____凛歌を初めて見た私と同じ状況になっているのだろう。
凛歌が再び目線を下に向けたとき、お母様が口を開いた。
「それで、何があったのかしら?」
お母様が聞くと、凛歌の隣に座っている男が答えた。
「簡潔に申し上げますと凛歌様が反対勢力の者によって誘拐されました」
「っ!?順を追って詳しく話して頂戴」
「はい。今日の午後、私のもとに高星家の使いを名乗る二人の方が来ました。お二方は事変の時に乳母に預けた凛歌様を捜しているとおっしゃっていました」
それを聞いたお母様が首を傾げた。お姉様も、なぜ?と言いたげな顔をしている。
「ちょっと待って。私は凛歌を乳母である
「ここまで、名乗りもせずにすみませんでした。改めて、私は
「そうなのね。安芸家に仕えていたのならば安芸がどうなったのかは知っているの?」
「はい。…………8年前に凛歌様が反対勢力によって襲われる事件がありました。安芸様はそれを凛歌様に感ずかれる前に片付けてしまおうと一部の者を率いて対抗しましたが、結局相討ちになってしまい……。その後、残った者で話し合いをした結果、貴族ではないから敵も見つけ出しにくいという理由により私が凛歌様を任されることとなりました。凛歌様の身を守るためとはいえ、今までご報告出来ず申し訳ありませんでした」
立石の話を私たちは静かに聞いた。聞き終わった後も言葉を発せずにいた。
ふと隣を見てみると、お母様とお姉様はご自分たちの判断を悔やんでいるようだった。
「私たちの知らないところでそんなことが……。立石と言ったわね。今まで凛歌のことを育て、守ってくれてありがとう。高星家を代表して礼を言うわ」
そう言うとお母様は頭を下げた。その後はお母様とお姉様、立石による話し合いが始まった。私と凛歌は黙って聞いている。
しばらくして話し合いが一段落すると、夕食の時間となった。
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