第16話

私は、残った時間でこの学園の事を聞いてみることにした。




「あの、一つ聞きたいんだけど、この学園には"契り"っていう制度があるんだよね?」


「姉妹の契りのこと?」


「うん。みんなも契りを結んでいるのか聞いてみたかったんだ」


「私と柚希、和葉は高等部3年の先輩と契りを結んでいるよ。他の子達も高等部の先輩と結んでいるはずだよ」




この後も瑛良達にいろいろと"契り"について質問した。そこで分かったのは"契り"を結ぶ相手は自分より学年が上なら誰でもいいということ。いくら学年が上でも、生徒会長だけは"契り"を結べないということだった。




「生徒会長である瑠歌様と契りを結びたいと思っている人は数え切れないほどいるけどね」


「そんなに人気なんだ……」


「だから瑠歌様と姉妹の関係になるには、血縁関係がないとダメなの。でも、瑠歌様には妹はいないらしいの」




この話を側にいた子達も聞いていたらしく、「妹になってみたかったなー」や、「御三家の養子なんて現実味がないしね」といった声が聞こえてくる。




「「キャーーーー!」」




瑛良達と話していると突然、教室の前の方から黄色い悲鳴があがった。どうしたのかと見てみると、みんなの視線の先には、さっきまで話題に挙がっていた生徒会長……お姉様がいた。




お姉様はクラスの中を覗きながら、扉の近くにいた子に話しかけた。




「奏歌っていう子を探しているのだけれど、このクラスで合っているわよね?」




お姉様がそう言うと、クラスの視線が私へと注がれる。




「私に何の御用ですか?」




私はが人混みを掻き分けて前に出ると、お姉様はクラスの子に「ちょっと借りるわね」と言い、私を連れ出した。


お姉様が向かった場所は生徒会室だった。




「失礼します」


「言わなくても大丈夫よ。今は誰もいないから。奏歌はそっちに座って」




教室と同じくらいの広さがある生徒会室は、お姉様の言った通り誰もいなかった。


私たちは応接用のテーブルに向かい合って座った。




「お姉様、ご用件は何でしょうか?」


「別に大したことではないのだけれど、授業についていけそうか心配でね」


「勉強は家でも教えてもらっていたので大丈夫そうです」


「そう。良かったわ。それと、名前の件だけれど」


「今朝、お母様から聞きました。お披露目までは、高崎の姓を名乗っていればいいんですよね?」




名前の件はお姉様からではなく、お母様から朝の挨拶の時に聞いていたので知っている。




「そうよ。自己紹介の時に間違えなかった?」


「私にとっては高崎の方が慣れているので大丈夫でした」




お姉様からしたら高星の姓の方が身近かもしれないが、私からしたら昨日まで使っていた高崎の方が身近なんだよね。




「そう。奏歌には不便をかけるけどお願いね」




そこまで話したときに丁度、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。私たちはお互いの教室へと戻った。






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