第8話

「ここが貴族街ですか?」


私の質問に答えたのは松山だった。松山は質問の答えと一緒に貴族街の仕組みも教えてくれた。


「はい。奥に見えている大きな建物が王族の方々が住むお城です。貴族の屋敷は奥に行けば行くほど身分の高い貴族の屋敷になっています」

「では、高星家の屋敷は奥にあるのですか?」

「はい。なので、お屋敷までもうしばらくかかります」


そんな会話をしながら馬車は貴族街はどんどん貴族街の奥へと進んでいった。20分くらい経った時に、屋敷に着いた、と松山に言われた。

馭者の花崎がドアを開けてくれたので、私は花崎にエスコートしてもらいながら馬車から降りた。


すごい!大きい!

それが高星家の屋敷を見て私が最初に思ったこと。

馬車の中から見た他の貴族の屋敷よりも大きい。前に住んでいた家とは当たり前だけど、比べ物にならない。

ちなみにこの屋敷の敷地には、普通の市民の家が10軒は建てることが出来そうなくらい広い。

御三家の高星家の屋敷が、こんなに大きいってことは、王族のお城はどれだけ大きいのだろう?


そんな事を考えながら歩いていると、いつのまにか屋敷の玄関にたどり着いていた。

玄関には高星家の使用人たちがずらりと並んでいた。そして、奥には瑠歌様と、瑠歌様に似た若い女性が立っていた。


「「お帰りさいませ、奏歌様」」


使用人たちが声を揃えて言った。

「おかえりなさい」その言葉は、今までお母さんと2人で暮らしていた時は学校が終わり、家に帰ってもお母さんは仕事でいないことが多く、言われた事があまり無かった。

そのため、大勢の人に一斉に言われ少し嬉しかった。


私から余韻に浸っていると、奥から瑠歌様と瑠歌様に似た女性が出てきた。


「おかえりなさい、奏歌。待っていました。」

「到着が遅くなってしまいすみません」


私は、私たちの会話を微笑みながら見ている女性が気になり、瑠歌様に聞いた。


「隣にいる女性はどなたですか?」

「紹介します。私の隣にいるのが母の華蓮かれんです」


なんと、お母様だった。

凄く若く見える。馬車の中で松山から聞いた情報によれば36歳だったはずだ。でも、実際には20代に見える。それどころか、瑠歌様と姉妹のようにさえ見える。年齢を言わなければ多くの人は勘違いするだろう。


「母の華蓮です。奏歌、おかえりなさい」

「ただいま戻りました、お母様」

「また、あなたの顔を見ることができてとても……嬉しい、です」


お母様は私の顔を見て涙を流し始めてしまった。私は思わずお母さまを抱きしめていた。

そんなお母様と私の肩を瑠歌様が抱きしめた。

そんな親子の抱擁に涙を流す使用人もいる。おそらく長年高星家に仕えている人たちだ。

それからしばらくして涙が止まったお母様が言った。


「とりあえず、部屋に行って荷物を片付けてきなさい。また後でゆっくり話しましょう」

「はい、そうさせていただきます。では失礼します」


私は松山に案内してもらい、自室へ向かった。

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