第7話

一階に行くと使用人らしき人が5人居た。


「おはようございます、奏歌お嬢様。お迎えに上がりました」


どうやら高星家の使用人のようだ。お互いに簡単な挨拶を済ませると、荷物を家から運び出し、馬車に載せてもらった。

積み込み作業が終わると改めて自己紹介をしてもらった。


「私は奏歌お嬢様の筆頭側仕えに拝命されました。松山千佳まつやまちかと申します。よろしくお願い致します」

「私は護衛官を務めさせていただく、上里雫うえさとしずくと申します」

「私は護衛官を務めさせていただく、九条楓くじょうかえでと申します」


1人目は私の身の回りの世話をしてくれるという、側仕えさんだ。簡単に言うとメイドさんと同じなんだって。

2人目と3人目は私の護衛官なんだそうだ。護衛官がいるってことはつまり、これからはどこに行くにも1人で行動が出来ないってこと。

お嬢様って大変だね。


「松山さん、上里さん、九条さん、これからお願いします」

「奏歌お嬢様、私どもの事は呼び捨てで呼んでくださいませ」

「絶対にそうしないといけませんか?」

「はい。立場を明確にする為にもそうしてください。あと、私たち側近に対して敬語は使わないようにお願いします」


私は、家を出る支度も終わり、あとは馬車に乗り込むだけとなっていた。ふと、奥にいるお母さんが気になって見てみると、お母さんの側仕えと何かを話し合っている様子だった。


「奏歌お嬢様、馬車の準備が整いましたので、外へどうぞ」

「分かりました。今、行くようにします。ですが、その前に少し時間を取れますか?」

「沙羅様のことですよね?あまり長くは取れませんが、多少の時間はあります」

「ありがとう、松山。では、行って来ます」


私は急いでお母さんの元に向かった。走っていったせいか、お母さんもこちらにすぐに気づいた。


「お母さん、もう行くね」

「いってらっしゃい。今日か、明日の夕方くらいには、一度、瑠歌様のところに伺う予定だから、もしかしたら会えるかもね」

「うん。それじゃあ行ってきます」


私はそう言うと、松山のところに戻り、一緒に外に出た。外に出ると想像していた物よりも凄く豪華な馬車が停めてあった。


「これに乗るのですか?」

「はい。こちらへどうぞ」


なんと、馬車の上の方には、高星家の紋章が付いていた。馬車のステップは少し高かったが、松山が手を握ってくれていた為、バランスを崩すことなく乗ることが出来た。


馬車の中は凄く綺麗でびっくりした。


「凄く綺麗ですね」

「お褒めの言葉、ありがとうこざいます」


私が馬車を褒めると、誰かが馬車を覗き込んできた。


「あなたは?」

「申し遅れました。私は高星家の馭者を務めております、花崎真司はなさきしんじと申します」


私は馭者という言葉の意味が分からず、松山に聞いた。馭者とは馬車の運転手のことなんだって。


挨拶が終わると馬車は出発した。高星家までは2時間くらいかかるんだって。

でも、松山たちと話をしていれば退屈する事は無さそうだ。


家を出発してから1時間半くらい経った時、周りの景色が華やかなお屋敷に変わり始め、貴族街に入ったことが分かった。

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