第20話

中に入ると既に瑛良たちが席に着いていた。瑛良の隣には若菜わかな様がいた。向こうもこちらに気づいた様で、小さく手を振ってくれた。私は軽く会釈をして、小晴お契姉様こはるおねえさまに着いて行き、席に着いた。


席とは言っても、茶道室なので机や椅子は無い。畳の上に決められた場所があるだけ。




ふと気になりちらっと私の一つ前に正座している瑛良と和葉を見てみると2人とも背筋を伸ばし、太ももの上に軽く手を乗せている。


2人だけでなく、私の隣に座っている柚希や先輩たちもとても姿勢がいい。


それを見た私も負けじと姿勢を正す。


足が痺れ始めた頃ようやく始業の鐘が鳴り、授業が始まった。




「今日の授業では皆さんにお茶を点ててもらい、それを契姉に講評してもらいます。採点があるので真剣に取り組んでください」




私はこの授業を受けるのは今日が初めて。だけど、茶道は昔お母さんから習ったから大丈夫……なはず。




「それでは始めてください」




先生の合図で中等部の生徒が各々お茶を点て始めた。


週1でこの授業を受けているみんなとは違い、私は久しぶりに点てる。動きが少しぎこちないけどしょうがない……。私の手付きを見た小晴お契姉様が心配そうに聞いてきた。




「奏歌、お茶の点て方は分かりますか?」


「はい、点て方については大丈夫です。ただ、久しぶりなので少しぎこちなくなってしまいました」


「そう。それならゆっくりでいいから頑張って」


「はい」




私は一度深呼吸をしてから、お茶を点て始めた。


美しく、丁寧に。一つ一つの動作に気を配りつつ、心を込めて点てる。


点て終わったら小晴お契姉様に作法に従ってお茶を出す。




「お願いいたします」


「いただきます」




小晴お契約 姉様に講評してもらうのは三つの項目だ。


①点てる時の作法と手際


②味と見た目


③出す時の作法と手際




小晴お契姉様はゆったりとした手付きで作法に従ってお茶を飲んでいく。


途中、茶菓子を挟みながらお茶を飲み終えると講評が始まった。




「奏歌、昨日あなたの事情を聞きました。作法や点て方を知らないかもしれないと聞いていましたが、想像以上に上手でした」


「ありがとうございます」


「ただ、少し時間がかかりすぎているから、次はスムーズに出来る様にやってみて」


「はい」




私のお茶の講評が終わると、小晴お契姉様がお茶を点て始めた。小晴お契姉様がお茶を点てるその動きは私とは全然違い、一つ一つの動作が洗練されている。見惚れてしまうくらい美しい。他国に嫁いでも大丈夫なようにと教育された代表貴族がこのレベル。


御三家の私はもっと上のレベルを求められるんだろうなぁ……頑張らなきゃね。


私は私に求められているレベルの高さに驚きつつ、小晴お契姉様の動作を一つ一つ頭に入れていく。




そんな事をしているうちに小晴お契姉様はお茶を点て終え、私にお茶を差し出す。私はそれを作法通りに飲んだ。

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