第31話
「お嬢様方、おはようございます。起床のお時間です」
「今日から学校ですよ。早く起きてくださいませ」
扉の方からそう聞こえるとともに、ベットの天蓋のカーテンが開けられる。起こしに来たのは私の側仕えである千佳と凛歌の側仕えだ。
色々あって大変だった昨日、湯浴みを終えた私たちは、側仕えによる肌の手入れなどを終えてすぐに寝落ちをしてしまった。
そのおかげか、ぐっすり眠れたので寝起きはそんなに辛くない。
「2人とも、おはよう。起こしてくれてありがとう」
「……おはようございます」
と思ったけど、隣の凛歌はまだ眠そうだ。
「お嬢様方、お召替えの準備が出来ましたのでこちらへどうぞ」
私は千佳に手伝ってもらって制服に着替える。少し離れた所で凛歌も着替えている。耳をすませると、側仕えと髪型をどうするか話し合っているのが聞こえる。どうやら、着替えている間に完全に目が覚めたみたい。さっきまでの眠そうな声ではなくなっていた。
着替え終えたら次は朝食。私たちが食堂へ行くと、丁度お姉様が朝食を食べ終えたところだった。
「おはよう、奏歌、凛歌」
「「おはようございます、お姉様」」
私と凛歌が作法通りに、貴族らしく挨拶をするのをお姉様は微笑みながら見ている。
「2人共、昨日はぐっすり眠れましたか?2人で寝ていたみたいだけど、何かあったのですか?」
どうやらお姉様は、私たちが一緒に寝たことを知っていたみたい。多分だけど、理由も察しがついているのだろう。
「いいえ、少し2人で話をしただけです。お互い、1人では少し不安だったので」
「2人で話しをしたら、不安も大分減ったので、ご心配はいりません」
私が答えると、凛歌もそれに続いて答える。お姉様に語る凛歌の表情は、昨日この家に来た時よりも随分と明るくなっていた。お姉様もそれを聞いて、安心した表情を浮かべた。
「そう。なら大丈夫そうね。私は生徒会の仕事があるから、そろそろ行くわね」
「「行ってらしゃいませ、お姉様」」
お姉様が学校へと向かうと、私たちも少し急いで朝食を食べた。その後、自室で身支度を整え、側仕えに荷物を持ってもらうと出発前にお母様の部屋へ向かった。
お母様の部屋の扉を、扉の前に立っている護衛に開けてもらって中に入る。お母様を探すと、執務机で仕事をこなしている最中だった。
「「おはようございます、お母様」」
「2人共、おはよう」
私たちが挨拶をすると、机から顔を上げ、挨拶を返してくれた。
「今から学校へ行ってまいります」
「そう。行ってらっしゃい。凛歌は……その顔を見る限り、大丈夫そうね」
「はい。昨日は迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」
「謝らなくていいのよ。こうして2人揃っている姿を見れるだけで私は幸せよ。迷惑だなんて全然思ってないわ」
「はい……」
お母様の言葉を聞き、凛歌は目元に薄らと涙を浮かべていた。
「2人共、そろそろ行ったほうがいいわ」
ふと、時計を見たお母様が言った。
「はい。では、行ってきます」
そう返事をして、私たちはお母様の部屋を出て、そのまま馬車に乗り、学校へと向かった。
校内に入ると、今日が初登校となる凛歌を教員室へと連れて行った。どの先生が凛歌の担任なのか分からず、とりあえず多賀先生を呼んだ。
「おはようございます、多賀先生。今日から転入する妹の凛歌を連れて来たのですが、凛歌の担任の先生がどなたかご存知ですか?」
「おはようございます、奏歌さん。と、隣に居るのが凛歌さんね」
「はい。高崎凛歌です」
「凛歌さんは私のクラスよ。本当は姉妹で同じクラスに属するのは禁じられているのだけれど、綾紗さんと生徒会長が二人一緒のクラスにして欲しいって学園長に進言したそうよ」
なんと、お姉様は綾紗様と一緒に凛歌の編入するクラスについて学園長に進言して下さったらしい。
後でお礼を言わないとね。
「凛歌さんは私と一緒に教室へ行きましょう。奏歌さんは先に行っていてください」
「はい。先生、凛歌のことよろしくお願いします」
私は先生に挨拶をした後、1人で教室に向かった。
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