第32話

教室に入るとすでに、瑛良の席に柚希と和葉が集まっていた。


 「おはよう、みんな」

 「「「おはよう、奏歌」」」

 「今日は遅かったね」


 いつもはもう少し早く来ている私が、今日は遅く来ているのが気になったらしく、瑛良が理由を聞いてきた。


 「少し用事があって教員室に行っていたの」

 「そうなんだ」


 その後、暫く私たちが会話を楽しんでいると、多賀先生が教室に入ってきた。


 「みんな、自分の席について」


 先生の呼びかけで、友達と話していた生徒たちが自分の席へと戻っていく。私と瑛良と話していた柚希と和葉も自分の席に戻っていった。

 全員が席についたのを確認したクラス長の東條さんが号令をかける。


 「起立、礼。おはようございます」

 「「おはようございます」」

 「着席」

 「みなさん、おはようございます。今から朝の会を始めますが、その前に1人紹介したい子がいます」


 先生がそう言うとみんながざわめき始めた。それもその筈。このクラスには、先日私が転入して来たばかりなのだ。この学園は幼稚舎からエレベーター式に上がる仕組みになっている。毎年転入試験を実施してはいるが、偏差値が高い為か合格者が少ないことで有名。そんな学校に、しかも同じクラスに短期間で転入生が2人も来るのは異常な事と言える。


 因みに私は、知っているので驚きはしない。隣で驚いている瑛良を横目に見ながら、この後起こるであろう展開に1人、心を踊らせていた。


 「それでは入って来てください」


 ガラガラガラ


 先生が言い終わると教室のドアが開き、凛歌が入って来た。

 凛歌は先生の隣に立つと顔を上げた。


 「初めまして。今日から1組に編入することになりました、高崎凛歌です。よろしくお願いします」


 凛歌が挨拶をした瞬間、みんなが一斉に私の方を見た。そして凛歌を見る。その表情は困惑、疑問、興味など様々だ。


 「あのー。奏歌、質問してもいい?」


 みんなが戸惑っている中、そう声をあげたのは瑛良だ。私は特に断る理由もないので、いいよと言った。すると瑛良は、まるでクラスのみんなの気持ちを代弁するかのような質問をした。


 「奏歌と、凛歌さんって双子だったりする?」


そう聞いてくる顔はものすごく真剣で、少し面白い。


 「うん、そうだよ。凛歌は私の双子の妹だよ」


私がそう答えると、教室のあちこちから「似てるー」などといった声が聞こえてきた。


 「みなさん、お静かに。凛歌さんの席は奏歌さんの後ろの席です。隣は……東條さんですね。色々教えてあげてください」

 「はい。わかりました」

 「では朝の会を再開します。今日の予定ですが、放課後に…………」


その後、先生は朝の会を再開したが、殆どの生徒が話を聞き流していたのは言うまでもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

平民の私がある日いきなり大貴族に⁉︎ 流歌(瑛良) @souka2kk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ