第29話
私と凛歌の部屋はお姉様の部屋を挟んだ反対側にある為、凛歌ともここで別れることになる。
「おやすみなさい、奏歌」
「おやすみなさい、凛歌」
そう言うとお互いの部屋へと歩き出す。
曲がり角まで来た所で私はふと後ろを振り返った。丁度、奥の角を曲がる凛歌が見えた。
私の目に映った凛歌からは不安や寂しさが感じ取れた。
「ねえ、
「そうですね……。本来ならお止めするべきでしょうけど、今日ばかりは瑠歌様も黙認してくださるでしょう。お嬢様こそお部屋にはベッドがお一つしかありませんがいいのですか?」
「もちろん大丈夫よ。確かに今日会ったばかりではあるけど、私たちは双子ですからね。そんなことよりも、早く凛歌を追いかけましょう」
「はい。行きましょう」
廊下を走ることは出来ない為、早歩きで凛歌の部屋へと向かう。追いついてみると凛歌は丁度部屋に入るところだった。凛歌は私に気が付くと驚いていた。
「奏歌?何かあったのですか?」
「えっと、何かあったわけじゃなくて……。もし良かったらなんだけど、今日は一緒に寝たいなって思って……」
「……いいのですか?」
「ええ、もちろん」
私から提案したことなのに遠慮がちに聞いてくる凛歌に私は即答した。
こうして無事に凛歌の承諾を得た私は、凛歌を連れて自室へ戻った。
自室に戻ってもすぐには就寝の準備をせず、ソファーに座り桂花けいかの入れてくれた紅茶を楽しんだ。
急遽、このお泊り会が決まった為、準備が出来ていないのだ。現に先程から部屋の中を千佳を始めとする側使えたちが忙しそうに行ったり来たりしている。よく見ると桶を持っている人もいる。湯船にお湯を張ってくれているようだ。
「お嬢様方、湯浴みの準備が終わりました。すぐにでも入ることが出来ますが、どういたしますか?」
「そうね、明日は学校ですから今から入ることにします。凛歌もそれでいいですか?」
「はい。もちろんです」
「では、お嬢様方こちらへ」
脱衣所へ着くと、私は
「お嬢様、側使えなしに湯浴みをするのはおやめください。お嬢様の身の回りのお世話が私共の仕事なのです」
「でも、1人で入れますよ?」
「そういう問題ではないのです」
だが、どんな説得をしても千佳は引き下がってくれない。このまま続けるのも嫌だったので、私は結局、凛歌と2人で入ることは諦めた。
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