第11話

しばらく廊下を歩くと、ある部屋に瑠歌様は入った。

よく見るとそこは、瑠歌様の部屋だった。私は瑠歌様に続いて部屋に入った。部屋の中は白を基調としてあり、家具などは見た感じ、私の部屋とそう変わらないみたい。でも、瑠歌様の部屋には勉強机の他にもう一つ、執務机があった。

執務机の上には書類が置かれていた。瑠歌様は当主だからその関係の書類だろう。


「紅茶を2人分淹れる淹れて頂戴。私は奥の部屋に行きます」


瑠歌様は部屋にいた側仕えにテキパキと指示を出した後、私を奥の部屋に通した。

私の部屋と間取りもほとんど同じみたい。さっき居た部屋が執務室だとすれば、今居る部屋は、生活スペースだ。


側仕えに椅子を引いてもらい私たちが座ると、丁度、部屋に紅茶が運ばれてきた。

瑠歌様は、側仕えに紅茶をいれ淹れさせると人払いをした。

側仕えだけでなく、護衛も部屋から出て行くと部屋には私と瑠歌様の2人きりになった。


私は何の話をするのか分からず思考を巡らせた。

もしかして、さっきの食事でいけない事をした?怒られる?

そんな事を考えていたら、不安が顔に出ていたみたい。


「奏歌、そんなに不安そうな顔をしなくても大丈夫よ。別に注意する為に部屋に招いた訳ではないのよ」

「では、何のお話でしょうか?」


私がそう聞くと、瑠歌様は一度目を閉じた。そしてゆっくりと目を開けると、さっきまでの当主としての表情とは違う優しい表情になった。


「ねぇ奏歌、今は周りに誰もいないから昨日みたいな口調で話してくれる?」

「えっ?でも……」

「貴族の口調ばかりだと大変でしょう?私も少し崩して話すから」

「分かりました、瑠歌様」


私が“瑠歌様”と呼ぶと瑠歌様は少し残念そうな顔をした。


「奏歌、私とあなたは姉妹なのよ。“瑠歌様”ではなく、“お姉ちゃん”とは呼んでくれないの?」

「呼んでもいいのですか?」

「当たり前でしょう?姉妹なんだもの」


私は、 今まで姉妹がいなかったので、姉妹と言われる度に嬉しく感じた。


「分かりました。瑠歌様をお姉ちゃんと呼ぶのは少し抵抗があるのでこれからは“お姉様”と呼ばせてもらいます」

「"お姉様”か。いい響きね。お願いを聞いてくれてありがとう」


お姉様は、とびきりの笑顔で言った。

その笑顔を見た私は、お姉様に惹かれてしまった。

お姉様は、元々お母様に似て鼻が高く、顔も整っている。体のラインも出る所は出て、締まる所は引き締まっている。誰が見ても美しいという言葉が出るだろう。


「奏歌?どうかしたの?」

「い、いえ。何でもないです」

「そう?」

「はい。お姉様があまりにも可愛くて……あっ!」


言っちゃった。

変な人と思われたかな?


「ふふっ。ありがとう。ところで、そろそろ本題に入ってもいいかしら?」

「はい。長くなってしまってすみません」

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