第22話

コンコン



「失礼します」


「来たわね。そこに座りなさい」



応接室にはお母様と、何故かお母さん……沙羅さら様と、お姉様と同じくらいの歳の女性がいた。私はお母様の隣に座り、沙羅様と対面する形になった。

今から何が始まるのかと考えていると、お母様が話し始めた。



「奏歌、今日は紹介したい人がいてここへ呼んだの」


「奏歌様、お久しぶりです。お元気そうで何よりです」



沙羅様が挨拶をした。お母さんと離れてそんなに日は経っていないのに、声を聞くと懐かしい気持ちになった。



「今日は娘の紹介に参りました。綾沙、挨拶を」


「奏歌様、お初にお目にかかります。沙羅の娘の綾沙あやさと申します。以後、お見知り置きを」


「高星奏歌です。こちらこそお願いいたします」



綾沙様?どこかで……あっ!前に、高等部3年に綾沙様って言う方がいるって瑛良たちが言っていた様な気がする。



「綾沙はソリーナ女学園に通っているから、何かあった時は頼りなさいね」


「はい。お願いいたします」



お互いの挨拶も終わり話し合いが始まった。



「奏歌をここへ呼んだもう一つの理由は学校での名前についての話し合いをしたかったからなの」



30分程で話し合いは終わった。話し合いでは私のお披露目が終わるまで高崎の姓を使うことについての細かいルールを決めた。その結果、もし私と綾沙様の関係について聞かれたときは従姉妹と説明することになった。



「話し合いも終わったし、私はこれで失礼するわね」



お母様はまだ仕事が終わっていないらしく、自室へと戻って行った。

部屋には私と、綾沙様と沙羅様の3人が残った。


もちろん側近たちはいるけど。


……どうしよう。誰も喋らない。この場合、私から話し始めるべき?



「お母……沙羅様、お久しぶりです」


「ふふっ、元気そうで安心いたしました」



最近までは家族だったのに、家族として接することが出来ずもどかしい。どうにかならないのかと思い私は千佳に聞いた。



「ねぇ千佳、話し方って崩してもいいものなのかしら?」


「お嬢様、奥様より伝言です。“私が退出した後に部屋に残る3人の中で1番身分が高いのは奏歌です。沙羅たちを含め全員、奏歌の言ったことに従うように”とのことです」



それって、私がこの部屋の中のルールを決められるってこと?



「私が言ったことに皆は従うのですか?」


「はい。私たちはお嬢様に従います」


「分かりました。……では今からこの部屋の中に限り身分の差を無くします」


「⁉」




沙羅様や綾沙様と話すだけならここまでやる必要はなかったけど、せっかくの機会だから千佳にも素の私を知って置いてもらおうと思ったんだ。

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