第20話 外の世界へ

なろうはちゃんと更新したのにこっち更新するの忘れてしまったんだ……マジデモウシワケナイ……。

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 ついに、俺達が外の世界へと出る当日となった。


 結局俺は、アルファの他にツヴァイとフィーア、そしてモアを同行者として選んだ。


 まず、ツヴァイとフィーアを選んだ理由は、長距離を移動する際の足となってもらう為だ。


 デモンウルフであるツヴァイとフィーアは、アインスやアネモイには劣るものの非常に速い。


 では何故、アインスやアネモイを同行者にしないのかというと、二つの理由がある。


 まず、アインスとアネモイは非常に強力な戦力だ。特にアインスの力は、他の魔物ではどう頑張っても補えないほど圧倒的なものである。そのため、元々ダンジョンの防衛に回すつもりであった。

 本人というか本狼は、俺の護衛をする気満々だったようだが泣く泣く断念してもらった。


 次に、デモンウルフの持つ特殊技能があるからだ。その特殊技能の名は《潜影》。その名の通り、影に潜ることができる能力だ。


 この能力を利用することによって、ツヴァイとフィーアは、俺とアルファを運ぶという"足"としての役目を終えた後、人間種族の街に入ることになっても、俺とアルファそれぞれの影の中で待機することができるのだ。


 ちなみに、ドライとフュンフにはダンジョンに何かあった時の伝令役として残ってもらう。


 また、モアを選んだ理由だが、これはもっと簡単だ。体の小さなモアなら衣服のポケットなどに潜むことができるため、モアの存在を隠して行動しやすい。加えて、意思疎通がしっかり取れるのもポイントが高い。


 完全に人間種族の姿へと《変化へんげ》できるツキヨと迷ったのだが、ツキヨを選ぶとヨミと揉めそうだったので止めておいた。我ながら英断だったと思う。


 モアは名目上俺の護衛として連れていく。


 俺も、"落ちこぼれ"と馬鹿にされていた以前よりは魔物達との戦闘訓練等をこなして強くなっている。

 しかし、それでもアルファやアインスには例え背伸びをしたとしても勝てはしない。ならば、そういった実力者と敵対する可能性を踏まえて念には念を入れておいた方が良い。


 このように、今後の方針を更に具体的に決めた俺は、ようやく皆に留守にしている間にやっておいて欲しいことを伝え終え、今は夜になるのを待っている真っ最中だ。


 何故夜になるのを待っているのかというと、俺達がダンジョンを出るところをなるべく目撃されないようにするためだ。


 現在、ダンジョンには割と多くの冒険者が毎日やってきている。


 侵入者は手分けして潰してはいるが、それでも当然取りこぼしは存在するし、これからダンジョンに挑もうと考えている冒険者全てを把握しきれる訳では無い。


 万が一そんな者達とバッタリ遭遇してしまうことで、生まれる可能性のある余計なリスクを背負わないように、冒険者が休息を取るために立てた拠点から基本的に動かない夜を待つことにしたのだ。見張りをしている者はいるだろうが、それでも昼に比べればリスクは少ないし、戦闘になったとしても有利な状況に持ち込みやすい。


 そういった事に不安を寄せつつも、俺は改めて、外に出ることを楽しみだと思った。


 かつて、人間種族の村から本を拾うために外の世界に出た事は何度かあったが、それでもダンジョン近くにある小さな村に行った程度だ。


 外に出ること自体久しぶりで、なおかつ少し遠出をして、大きな街に行くなんてワクワクするに決まっている。


 しかも、今回は一人では無く、超絶美少女のアルファもいるのだ。


 本当に楽しみである。


 俺はそんな風に考えて、期待に胸を膨らませた。



 ◆◇◆◇◆



 魔族は人間種族に比べて肌の色が濃い。


 これは常識だ。


 つまり、このまま外の世界に出ると、俺は魔族だと簡単にバレてしまうのである。


 では、どうするのか。


 それを説明するには、まず魔法について少し話をする必要がある。



 そもそも魔法には属性が存在する。


 属性は、【火】【水】【風】【土】の基本四属性と、【光】【闇】の希少二属性を合わせた計六属性だ。


 これは魔族にも人間種族にも共通することなのだが、生命体は魔法においてそれぞれ得意な属性を持つ。

 得意な属性があるからといって、その属性の魔法しか使えないという訳では無いが、得意な属性以外は魔力効率が非常に悪いため使うことは滅多に無い。


 ここまでの情報は、誰もが知っているものである。


 ここからは魔物育成キット取扱説明書『【賢】の書』に記してあったことを踏まえて説明していこう。


 まず、魔法とは生命力のエネルギーを行使することで使う超能力のようなもののことらしい。


 生命力には幾つか種類が存在する。


 その中で、"魔法"という単語の名付け親でもあるかの『大賢者』エドガー・アシュクロフトは、最初に発見した【闇】属性の魔法を行使する際に使われる生命力を"魔力"と称することにした。


 エドガーはその後、【光】属性と【火】【水】【風】【土】の基本四属性の魔法は、それぞれ魔力とは違う種類の生命力によって放たれている事を発見した。


 そしてエドガーは、【光】属性の魔法を放つ際に使われる生命力を"聖力"、【火】【水】【風】【土】の基本四属性の魔法を放つ際に使われる生命力を"霊力"と、それぞれ称することにしたようだ。


 そのため、魔法と言っているが、最終的に魔力を行使するのは【闇】属性のみだという事になってしまったらしい。


 余談だが、彼は後にこの事実に気づき頭を抱えたという。


 まあ実際は殆どの人が霊力も聖力もまとめて魔力と認識しているので、生命力=魔力として表現されることが多いらしい。


『【賢】の書』にはさらに、「霊力は精霊が、聖力は天使が、魔力は悪魔がそれぞれ象徴される」という興味深い事も書かれていた。


 さて、ここまで小難しい話を続けてきたが、これで魔法というものの概念について何となくは理解してもらえたと思う。



 ここで話をどうやって魔族だとバレないようにするのかという話に戻そう。


 先程、生命体はそれぞれ得意な属性を持つという話をしたと思うが、俺の得意属性は【光】と【闇】だ。


 そう、希少二属性が両方とも得意属性なのだ。


 これだけ聞けばとても凄い事のように聞こえる。いや、実際とても特異な事なのだろう。


 だが、俺は生まれつき魔力量が少なかった。


【光】と【闇】は希少な属性であるが、少ない魔力で扱える魔法は大したものが存在しない。精々暗がりを照らしたり、他者の体調を崩したりといった程度である。


 そう、【光】と【闇】の二属性は希少な属性であると同時に扱いが非常に難しいのだ。


 少ない魔力で扱いやすいのは基本四属性だったりするのである。


 しかし、俺の少ない魔力では魔力効率の悪い基本四属性の魔法は扱うことができなかった。


 こうして、俺は"落ちこぼれ"となった。


 両親も周りの人間も、期待していただけに期待外れの存在へと育った俺を強く貶した。


 だが、そんな俺の少ない魔力と相性の悪い得意属性でも、できることはあった。


 その一つが、である。


【闇】属性魔法|着色《カラーリング》。


 元来、人族と魔族に肌の色以外の見た目の違いはほとんど無い。


 そう、肌の色さえ誤魔化せれば魔族だとバレないのだ。


 そこでこの《着色カラーリング》である。この魔法を使うことで、肌の色を自然かつ完璧に誤魔化すことが可能だ。


【闇】属性の魔法には、この上位の魔法に《擬態カモフラージュ》というものも存在するらしいが、俺の魔力量で使えた試しは無い。


 俺はこの《着色カラーリング》を使う方法で、かつてダンジョン近隣の人族の村から本を頂戴してきていた。


 今回もその方法でいこうと思う。


 今まで、自分の得意属性が【光】と【闇】だった事を恨んできたが、今日は生まれて初めて【闇】属性魔法を使えた事に感謝した。



 ◆◇◆◇◆



 夜になり、俺とアルファとモアはツヴァイとフィーアに乗りダンジョンを駆けていた。


 幸いな事に、冒険者とは遭遇していない。


 俺が、このダンジョンは五階層しかないから最短ルートを通って数十分で済みそうだが、大魔王と称される存在のように、巨大なダンジョンを持つ者は、外に出るためにどれだけの時間がかかるのだろうかと、くだらない事を考えていると……。


「見てください!出口みたいですよ!」


 と、アルファが声をあげた。


 ツヴァイとフィーアはその声に背中を押されたようにさらにスピードを上げた。


 そして、俺達は外の世界へと飛び出した。


 そこには、本物の星空が広がっていた。


「うわぁ〜〜〜……」


 アルファが、思わずといった表情で少し間抜けな声を上げている。


 だが、それも仕方が無いだろう。


 アルファは、箱庭の製作を手伝うために創り出された人造人間ホムンクルスである。


 彼女は、生まれてからずっと箱庭かダンジョンの中にいたのだ。


 そう、彼女にとっては生まれて初めての外の世界なのである。


「どうだアルファ?外の世界は」

「す、すごいです!今、言葉では表せないほど興奮しています!」


 そう言って目を輝かせているアルファを見ると、頭の上に広がる星空が、箱庭の中で散々本物と遜色ないものを見ている筈なのに、普段よりも一際美しく感じた。


 やはり、どうやら俺も久々の外の世界にテンションが上がってしまっているらしい。



 さて、折角だ。外の世界を思い切り楽しむとしよう。

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