第12話

 そうこうしている内に、目的の坂に到着。

ここは大学から15分ほど車を走らせた所にある知る人ぞ知る坂。

雪の降った翌日などは、学生がソリやスノーボードの板を片手に遊びに来る。

路肩にトラックを止めて、荷台から荷物を下ろす。

雪解け君1号を坂の上に設置し、ホースを使って川の水を汲む。

電源は車のバッテリーを使い、背面のスイッチをオンにすると、雪を排出する口からフワフワの雪が吐き出された。

 

「すっげ……」


 思わず目を見張るクラウディ。

雪解け君は首を振りながら満遍なく斜面に雪を積もらせて行く。

30分後、降り積もった雪が坂を覆い尽くした。

ざっく、ざっくと雪を踏みならし、小森の方を向く。


「サンキューな、小森」


「ええ。 ところで、肝心のボードはどこに?」


「ああ、こいつだよ」


 ポケットのもっこりした部分を弄り、手にしたのはガチャガチャの玉。

それを割ると、中からスノーボードのストラップが現れ、雪の上に落ちると元のサイズへと戻る。


「えっ、何ですか、コレ!」


「えーと……」


 本当のことを言えば、答案を盗もうとしていることがバレてしまう。

クラウディは、米軍の特殊な技術、とだけ言った。

小森は、あり得ない…… と声に驚きを滲ませる。


「物質の質量を無視してます…… まるでドラえ○んの道具みたい」


「ドラえ○んの道具か。 言われてみりゃ、そうだな」


 板をその場に置くと、クラウディは足を乗せた。

板のない小森は上にいると降りれなくなる為、下で待機している。


(スノーボードやったことねーけど、ダサいとこ見せらんねーしな)


 小森を前に、下心を見せるクラウディ。

曲がり方が分からなければ、真っ直ぐ進めば良い。

それでも滑ることに変わりは無い。

エターナルブレイカーは条件を満たすハズだ。

クラウディは思い切って斜面に身を乗り出した。

少しずつスピードが上がる。


(あっ、や、やべっ)


 クラウディは真っ直ぐ小森の方へと向かう。


「……え!」


 板のコントロールが出来ない。

凄まじいスピード。

時速200キロは出ているか、体感ではそれ位早く感じる。

そして、


「よけっ」


 体に衝撃が走り、2回、3回と転がる。

天井が見えた。

鈍痛が体を駆け巡る。


「……がはっ。 こ、小森っ」


 目の前に、宇宙服のヘルメットが転がってきた。



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