テストブレイカーズ

@moga1212

第1話

東京の西側。


その一角に広大な米軍基地がある。


米軍基地の敷地の外、車の行き来する道路に、路駐している車が1台。


男の1人が後部座席から中の様子を伺おうと、窓から頭を出していた。


彼の名前は曇り男クラウディ


クラウディは彼のコードネームであり、本名は渡辺一也。


メカニカル大学の2年だ。




「あんまり顔出すなよ、怪しまれるぜ」




 クラウディの横に体のでかい男がもう一人。


彼は晴れ男サニーで、本名は豪田力斗。


同じくメカニカル大学の2年で、この二人には共通点があった。


それは、試験ブレイカー、というバイトをしていることだ。


試験ブレイカーとは、試験の答案用紙を盗み、それを欲しがる学生に流す、というバイトで、成功報酬はそこらのバイトとは比べものにならない程高い。


その試験ブレイカーの仕事を斡旋しているのが、運転席に座っている白衣の男。


彼は二人からキョージュ、というコードネームで呼ばれている。


キョージュはクシャクシャの黒髪を掻きながら、二人に命令した。




「今からあの米軍基地に潜入してもらうが、一般人は立ち入り禁止だ。 そこで、冷蔵庫の修理業者に扮して、中に入って貰う」




 二人は事前にその説明を受けており、ブルーの作業着に身を包んでいた。


彼らはこの数日後、とある最大級のミッションを行う予定となっていた。


それは、1月13日以降に行われる大学の共通試験、センター試験の答案用紙を盗むミッションである。


2020年から名称が「共通テスト」に変更されるが、ちまたではセンター試験と言った方が馴染みがあるだろう。


クラウディとサニーの二人は、キョージュの研究室でこんな説明を受けていた。




「センター試験の答案用紙はそこらの学校に忍び込んで盗むのとは訳が違う。 素人が生半可な覚悟で手を出せば、命を落とすだろう」




 サニーがまたまたぁ~、と手のひらを上に向けて言う。




「大げさなんだからさぁ」




「いや……」




 クラウディが口を挟む。




「センター試験の答案、未だに試験前に手に入れた人間はいないらしい」




「……」




 キョージュが咳払いをして再び注目を集める。




「その通りだ。 答案を盗むにはそれなりの準備が必要という訳だ」




 こうして、3人はセンター試験の答案を盗む準備のために、米軍基地へとやって来た。


狙いは、日本では使用することの禁止されている強力な武器である。


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