第24話

「初めから知ってたのか?」


「それに答えることは出来ませんね」


 斜め45度の角度でこちらを見やる野間口。

キメ顔に少し腹が立ったものの、下半身は用を足している最中であり、全く格好がつかない。


(とにかく、こいつの黒歴史を調べねーと)


 クラウディは、野間口の弱点を探るため、キョージュと連絡を取った。


「キョージュ、今、科学の野間口が目の前にいる。 情報をくれないか」


「分かった。 30秒、待ってくれ」


(めちゃくちゃスムーズに連絡取れるじゃねーか!)


 さっきのノイズは何だったのか。

ジョボ、ジョボボ、と野間口は用を足している。

ガン見されていても用が足せる野間口は、中々図太い男なのかも知れない。

そんな情報はどうでもよく、すぐにイヤホンからキョージュの声が届いた。


「野間口は小学校の頃、作品コンクールに受賞した経歴があるが、あまりに上手すぎると友達が問い詰めた所、母親の書いたものだと発覚した」


「サンキュー、それが奴の黒歴史か。 ……てか、今更本人気にしてんのか?」


「野間口ほど隙の無い人間は、今までの人生でイジられたことがないハズだ。 だから、僅かな綻びが突破口になる」

 

 なるほど、言われてみればそうかとクラウディは思った。

早速、用を足して手を洗っている野間口に対し、その事を告げる。


「お前、コンクールで提出したやつ、かーちゃんが書いたらしいじゃんかっ。 だっせーっ」


「……」


(効いたか!?)


 何食わぬ顔で洗った手をハンカチで拭い、クラウディを見やる。


「今更、そんなものはどうでもいい。 「生き恥」の君に比べればな」


「は? 俺のどこが生き恥なんだよ」


「君は金髪ツンツン頭に、ムラサキの変な服を着込み、段ボールで作った剣を担いでいるが、それは何かのゲームのマネか? 私には黒歴史を現在進行形で更新し続けているようにしか見えないが」


「……いや、言ってる意味分かんねーわ」


 クラウディは子供の頃にプレイしたゲーム、「F○7」のキャラ、クラ○ドの格好のマネをしていた。

それは、純粋に格好いいと本人が思っていた為であったが、野間口は更にイジる。


「私一人の意見では納得できないと言うのなら、学生らに聞いてみよう」


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