第25話

 いつの間にか、学生らに囲まれるクラウディ。


「え、それク○ウド?」


「完璧クラウ○だよね」


「○ラウドだ、ばえる~」


 クラウディは無意識のうちにクラウ○の格好をしていたが、それを問い詰められ、自分という存在があやふやになる。


(俺はクラウディ…… じゃない? 俺はク○ウドなの…… か? オレハ、ナニモノナンダ……)


 クラウディの中で、何かが砕ける音がした気がした。

水面に石が投げ込まれたかの如く、そこに移る自分の姿が分からなくなった。










 トイレットペーパーを顔にグルグルに巻いて、手鏡を見る女性がいた。


(もう少ししたら、外してもいいかしら)


 彼女は男子トイレで試験ブレイカーなる男を撲殺していた。

更に、傍らの金棒で顔を殴打、変形させ女性の骨格にすると、脳内に自分のCPUを埋め込み、体を乗っ取った。

その場にあったテーブルクロスなどを適当に見繕い、今彼女は女性トイレの個室にいる。

そう、彼女は桜子である。


(クラウディの助けにならないと、ね)


 桜子は個室から抜け出すと、廊下に出て周りを伺った。


(あれは……)


 偶然、手に分厚い本を持つ男を見つけ、後を追う。 


(もしかしたら、試験を作った「国語」の先生かも)


 男はそのまま階段を上がり、とある一室へと入った。

遠目で確認した桜子は、木製の階段を足音を立てないよう上り、少し開いた扉の隙間に近づき、聞き耳を立てた。


(……この声は福沢学長かしら?)


 本を持つ男と福沢学長が何か話をしている。

このしわがれた低い声は学長か。

それ以外にも何人かいるようだ。


「試験ブレイカーは何人か確認できたか?」


 ややくぐもった、聞き取りにくい声。

これは本の男か。


「ええ、先ほど金棒を手にした男を見つけました。 彼は試験ブレイカーと思われます」


「では、それ以外にも潜伏している輩もいると考えて良さそうだな。 では、速やかに殲滅に移行しよう」


(そんな!)


 桜子が聞いてしまった驚愕の事実。

それは、このパーティーが試験ブレイカーらを一網打尽にすべく開催されたダミーのパーティーである、ということだった。


(クラウディに知らせないと!)

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