第11話
クラウディと小森は1階にある倉庫へと向かった。
番号はクラウディも知っており、倉庫の入り口はダイヤル錠がはめられ、それを解除して中へと入る。
「あっ、あれです!」
ブカブカの手袋が指差した先に、加湿器のような装置。
その装置にはガムテープを切り貼りしながら形づくられた「雪解け君1号」という文字。
(「解」の文字は手こずっただろーぜ)
そんなことを思いつつ、装置を外へと運び出す。
付随する蛇腹のホースを肩に背負い、それも外に出すと、
「私、大学の施設課からトラック借りてきます」
と言って、大学の事務所の方を向き直る。
「おっけ。 つかお前、そんなブカブカの手袋して運転出来るのか?」
「ダイジョブです!」
ガッツポーズをして自信満々に駆け出す小森。
小走りする後ろ姿を見て、初めて女の子っぽいな、とクラウディは独りごちた。
小森が持ってきたトラックの荷台に雪解け君1号とホースを乗せる。
雪を降らせる坂までは小森が運転するとのことで、クラウディはそれじゃあ…… と助手席に乗り込む。
小森は意外にも器用で、マニュアルのトラックを慣れた手つきで乗りこなしている。
坂に向かう途中、クラウディの頭にはいくつか質問したいことが過った。
(こいつ、ツッコミ所だらけだもんな…… 素顔も気になるし……)
顔を隠しているという点から、あまり可愛くないのか?
だが、声はクラウディの好みにどんぴしゃで、これで可愛くなかったら詐欺だな、とさえ思った。
クラウディはもう少し話がしたい、という気になり、相手が話しやすい話題を振ることにした。
「小森って、何で雪やら氷やらの研究室、入ったんだよ?」
「……」
少しの沈黙。
「あっ、まあ、話にくいならいいけど」
「ち、違うんです!」
慌てた様子の小森は、ちょっと恥ずかしいんですけど、と言いつつ、こう答えた。
「海外ドラマってあるじゃないですか。 それのワンシーンに、雪の日に結婚式を挙げるっていうのがあるんです。 そのシーンを見て、私もこういうの憧れるなァ、って、思っちゃって…… 気付いたら緒方先生の研究室、入ってました。 ごめんなさい、何か、大した理由じゃなくて……」
「……すげぇ、いいじゃんか」
「ほ、本当ですか!」
この宇宙服の女子は、クラウディの心を鷲づかみにした。
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