第10話

「俺、次の「それとなく機械いぢり」に出なきゃなんねぇから、一旦教室向かうわ」


「分かった」


 サニーと別れ、クラウディがやって来たのはキョージュに教えてもらった雪、氷について研究をしている緒方教授の部屋。

ちなみに、キョージュと同じ理工系の研究室の為、同じ建屋内にそれはある。

階段で5階から6階へと上がり、緒方教授の研究室の前へとやって来ると、戸を叩く。

少しして現れたのは、妙な出で立ちの女子。


「……緒方教授…… いますか?」


 そう言いつつ、後退るクラウディ。

現れたのは、宇宙服のようなモノを身につけた女子で、声でどうにか性別の判断が出来た。

が、明らかに不審者である。


「コホー、コホー。 あ、この格好、お気になさらず。 私、ちょっと潔癖でして」


 突然、スプレーを吹きかけられるクラウディ。


「うわっ、何だよ!」


「除菌、しました。 コホー。 さ、お入り下さい」


 まるでウイルスか何かのような扱いを受けたものの、クラウディは奥の緒方教授の個室へと入る。


(こっちは普通だわ)


 清潔な身なりの30代後半と思しき男。

彼が緒方教授だ。

緒方教授はパソコンの画面を見ながら、何の用か、と聞いた。


「キョージュ…… じゃなくて、ウチの北城教授の紹介で、こちらに伺いました。 先生の雪を降らせる装置をお借りしたいんですが……」


「ああ、アレかい。 貸すのは全然いいんだけど、一体何の目的で?」

 

「えーと、スノーボードの練習をするだけなんですけど、今、シーズン外れてるじゃないですか」


「……なるほど。 確かに今はどこのスキー場も滑れる状態じゃないだろうな。 それなら、1階の物置に私の積雪マシンがあるから、トラックで積んで裏の山で使うと良い」


 メカニカル大学は都心より少し離れた駅からバスで30分かけて通う。

坂を上った丘の上辺りに建物があり、周りも山だ。

雪を降らせて簡易的なスキー場を作るのには持って来いの立地である。


「小森君、話は聞いていたかな。 準備を手伝ってあげてくれ」


「はい」


(げっ)


 あまりかかわり合いになりたくない感じの宇宙服がひょこ、とドア枠から現れる。

クラウディはこの小森と呼ばれる女子に連れられ、倉庫へと向かった。

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