第16話

(さて、どうやって登るか……)


 脚立を使えば下にそれが残ってしまう。

もし天裏がオヤジの隠れ家とすると、上を調べたことがバレてしまう。

サニーともう一度来て、片して貰おうか、そう考えた時、クラウディの目にあるものが映った。

机である。

机にはコードが差してあった為、一旦引き抜いて机を移動させる。

 

(音を立てないよう、ゆっくりな)


 机を移動させると、丁度真下辺りにそれが来た。

点検口に手が届く距離で、机ならば脚立よりは違和感は無いだろう。

クラウディが机に這い上がると、手を伸ばし点検口の爪を外す。

点検口の縁はもろく、クラウディはその上部の天井の骨組み(軽鉄)に手をかけ、反動を付けてよじ登った。

周りは薄暗く、天井の躯体との距離は1メートル位しかない。

ふと、横に投光器(ライト)が転がっているのを確認し、そのスイッチを入れた。


(……当たり、だ)


 ライトを照らすと、その付近にまるで生活空間のようなスペースが現れた。

木の板の床が敷かれ、パソコンのモニター、お菓子の入った棚などが置かれている。


(あのオヤジの住処で間違いない)


 クラウディは、そこにオヤジが現れるまで身を潜めることにした。









 夜中になって、下から音がし、天裏から小さな穴を開けて床下の様子を確認する。

先生が研究室から出て、鍵をかけているらしい。

クラウディも天裏に身を潜めて、いい加減いつ現れるのか、と痺れを切らし始めていたが、その直後、オヤジが現れた。

自前の鍵で研究室内に入り、ズルズルと何かを引きずっている。


(……小森か)


 オヤジは下で脚立を準備していたが、違和感に気が付いた。


「この机、邪魔だべなっ」


 一人で毒づきながら、乱暴に机を押しやる。

そして、脚立を立てると、それに足をかけ、点検口を開けた。

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