第20話

 海岸の道路に車を停車させ、キョージュ以外の4人が降りる。

 

「これでやり取りをする」


 それぞれ、キョージュからイヤホンを手渡され、耳にはめる。

キョージュが車内に備え付けられている無線のマイクをオンにし、テステス、と語りかけると、イヤホンから声がした。


「オッケー、聞こえるよ」


 クラウディが親指を立てる。

4人が海岸に泊められている巨大な船に近づくと、早速キョージュから無線が入った。


「パーティーは夜中の9時から早朝6時までやっている。 それまでに5つのデータを手に入れてもらうが、ターゲットの容姿が分からないだろう」


「ああ。 どうやって見分けりゃいんだ?」


 サニーが質問すると、


「科学の先生なら、白衣を着ていたり、何らかの特徴があるはずだ。 それで見分けるしかない」


 曖昧な判別方法しかないことに、クラウディが舌打ちする。


「……ちっ、それしか無いのか」


「まあ、やるっきゃないよ!」


 メリケンサックをはめたティファールが拳を自分の手のひらに打ちつけ、気合いを示す。


(超、武闘派じゃねーか……)


 ティファールを見て若干青ざめるが、仲間なら頼りになると気を取り直す。

4人が船の入場口に到着すると、クラウディが永久機関大学の入館証を見せる。

黒いスーツの男がそれを確認すると、中へと通された。


「どうも」


 クラウディが桜子を伴って中に入ろうとすると、


「その前に」


 と、黒スーツから船内のルールの説明を受けた。


「船内では暴力等の行為は禁止です。 見つければ直ちに出禁になりますので」


「……分かりました」


 当然のルールといえば当然だが、彼らにとっては大問題である。

中へと入り、ロビーを通過すると、船の中とは思えない煌びやかな装飾のダンスフロアが視界に入る。

4人は一旦部屋の隅に向かった。


「ど、どうしよ……」


 ティファールが暴力禁止と聞いて、狼狽していた。

クラウディがイヤホンでキョージュに呼びかける。


「キョージュ、暴力禁止って言われちまった。 どうすりゃいい?」


「……問題ない。 それも考えてある。 データを持っている先生の名前を探り、それが分かったら私に教えてくれ。 彼らはみんな名のある先生だ。 ウィキペディアで経歴が確認できるだろう。 そこから小、中、高校を洗い出し、メルカリの転売ヤーから卒業アルバムを拝借する。 うまくいけば黒歴史を発見できるハズだ」


「……そういうことかよ」


「察しが良くて助かる。 クラウディ」


(先生の黒歴史を武器に、口撃をしかけてメンタルを破壊する)

 


 

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