第26話
「アレクサンダー様、マッサージしますから横になってください」
「いや、そんな事は召使にやらせるからいいよ。
ソフィアも一日前線にいて疲れただろ?
ソフィアこそマッサージしてもらいなさい」
「いえ、私は大丈夫です。
私がアレクサンダー様にマッサージがしたいのです。
他の女がアレクサンダー様に触れるのが嫌なのです。
いえ、女だけでなく、男であろうと、アレクサンダー様に触れるのが嫌なのです。
ですから、どうか私にマッサージさせてください」
「……分かった。
そこまで言うのならソフィアにやってもらうよ」
アレクサンダー様が引いてくださいました。
私が悋気、嫉妬しているのを理解してくださったのです。
連日連夜の警戒と迎撃で、アレクサンダー様も私もヘトヘトです。
そのためか、アレクサンダー様は昨日マッサージを受けられました。
若く美しい侍女からマッサージを受けられたのです。
私は嫉妬で侍女を殺しそうになりました。
大げさではなく、本当に怒りに我を忘れそうになったのです。
前線で戦うようになった私は、戦友から色々な話を聞けるようになっていました。
アレクサンダー様がこの国有数の売春婦や踊り子を相手にして、男性機能を取り戻そうとされた話も聞けたのです。
だから、そのような方法で、男性機能が回復するかもしれないと知ったのです。
それからは、オールトン侯爵家の侍女たちから色々な話を聞きました。
特に結婚経験のある侍女たちから、男性について色々と教えてもらったのです。
そのお陰で、男性が喜ぶ事を知ることができました。
夜に着る夜着を工夫すべきだという事も、侍女たちに教えてもらいました。
一番の技がマッサージだという事も知ったのです!
いえ、アレクサンダー様が侍女相手に戯れる気がないことは分かっています。
純粋に疲れをとるつもりで頼まれたのも知っています。
だから昨日は何も言わなかったのです。
ですが、それで私の心にどす黒い闇が生まれたのです。
この闇に囚われてはいけない事は重々承知しています。
だから、闇に囚われないようにするのと同時に、アレクサンダー様の男性機能回復に挑戦するつもりなのです!
別に願いがかなわなくてもいいのです。
いえ、嘘です。
心から治って欲しいと思っています。
アメリアの呪縛から解き放たれて欲しいと、心から願っています。
アレクサンダー様自身は、一生アメリアの呪縛に囚われていたいと思われているかもしれませんが、私は自分の力でアレクサンダー様を解き放ちたいのです。
誰のためでもなく、私自身のために!
今夜は勝負の時です!
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