第13話

「私も連れて行ってください!」


「ダメだ!

 危険すぎる!

 ソフィアが強いのはこの前の事で分かっている。

 人を殺す覚悟があることも分かった。

 だが女性を戦場に連れて行く事はできない。

 女性を護るのが男の務めだ。

 どうしても戦ってもらわなければいけない時は、城を護ってもらう。

 僕が帰ってくる場所を護ってくれ」


「いえ、嫌です。

 少しでもアレクサンダー様の側を離れるのは嫌なのです。

 どうかお連れください。

 私の実力ならば、足手まといにならないのは理解してくださっていますよね?

 領民を護るのが領主の義務だと、アレクサンダー様は教えてくださいました。

 その言葉通り、アレクサンダー様は民のため戦っておられます。

 私も偽装とはいえアレクサンダー様の妻でございます。

 領主一族でございます。 

 領民を護る義務があります。

 アレクサンダー様は次期領主ではありませんか。

 次期領主として、私を領民のために活用する責任があるのではないですか?!」


 私は、嫌な女です。

 アレクサンダー様の心の全てを自分のモノにしたいのです。

 そのためなら手段を選びません。

 もう、恥ずかしいことなど何もないのです。

 ですが、だからといって、アレクサンダー様に蔑まれるような真似はできません。


 私に思いつくのは、理想の領主夫人になる事です。

 アレクサンダー様は良妻賢母を望まれていますが、心をアメリアに持ち去られた状態では、良妻にも賢母のもなれません。

 私がなれる領主夫人のなかで、アレクサンダー様の心を奪う事のできるモノ。

 それは領民のために戦う領主夫人だと思ったのです。


 アレクサンダー様と肩を並べて戦い、背中を護る領主夫人です。

 戦友といえる領主夫人になるのです。

 今直ぐは無理でしょうが、いつか、アメリアが持ち去って行ったアレクサンダー様の心を取り戻してみせます。


「分かったよ。

 そこまで言うのなら手伝ってもらおう。

 だが一緒に戦うのなら、僕の指示に従ってもらうよ。

 僕が引くと言ったら素直に引くんだ。

 まだ戦えるとかはなしだよ。

 約束できるかい?」


 アレクサンダー様は慎重です。

 普段なら戦い続ける状態でも、私がいるから撤退するつもりです。

 足手まといになるかもしれません。

 でも、慎重になってくださるなら本望です。

 領民のために無理をされ、アレクサンダー様が傷つくのは嫌なのです。

 内心では邪魔だと思われても、アレクサンダー様を護りたいのです。


 身勝手、支離滅裂な考えです。

 アレクサンダー様の意に沿って、愛されたいと思う心と、嫌われることになってもアレクサンダー様を護りたいと思う心。

 日により時により考えが変わってしまいます!

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