第20話ウィリアム王太子視点
「どうすべきだと思う、ウィリアム」
「全面的に謝罪する以外ないと思われます、国王陛下」
「余が頭を下げなければ治まらんか」
「はい。
全ては、イヴリンのような下劣な女を、大切な要地を預かる侯爵家の押し付けた、国王陛下の私情による結果です。
ここで詫びなければ、オールトン侯爵家とウェルズリー侯爵だけではすみません。
両家を頼る寄騎貴族士族はもちろん、他の地方貴族地方士族も、身勝手な王家を見限ることでしょう」
「全てを余の責任と申すのか?
それはいささか厳し過ぎるのではないか?
王族を嫁に欲しいと言ってきたのはウェルズリー侯爵家だ。
王家から臣籍降下させられる女など限られておる。
出来の悪い女になるのは仕方あるまい」
「厳しいことを申し上げますが、それが今回のような苦境を生むことは、国王陛下の立場なら、読んでおかなければいけないのではありませんか?
全貴族士族は、国王陛下にそれだけの力量を求めています。
少なくとも、その程度の事を予測し諫言する重臣や側近を、側に置き耳を傾ける程度の事はすべきを考えております」
「……余が、甘言を好んで忠臣をおかず佞臣を侍らせていた。
そう貴族士族に思われているというのか!
余が暗愚の王だとお前は言うのか!?」
「結果が全てでございます。
この状況を予測できず、イヴリンを臣籍降下させたのは国王陛下と重臣側近でございますぞ!
反省もせず!
まだ愚行を重ねると申されますか!
国王陛下!」
「……分かった。
余が愚かであったのであろう。
だったらウィリアムはどうすべきだったのと考えておる。
余の批判をするなら、王太子として応えよ!」
「全ては後知恵でございます。
私がその時に王であったとして、最良の手を打てたかどうかわかりません。
今まで申し上げたのは、貴族士族が期待する国王像でございます」
「言い訳はいい!
お前の考える最善手を言ってみろ!」
やれ、やれ。
我が父とはいえ、理想の国王には程遠い。
国のため父のためと、直言や諫言をし過ぎると、死を賜るかもしれない。
今日は少し言い過ぎてしまったかもしれない。
だが、今は王家は滅びるかどうかの瀬戸際なのだ。
私の命を賭けなければいけないだろう。
そうしないと、父の愚行をどうこう言えなくなってしまう。
「一手はオールトン侯爵家の娘を陛下の養女とし、その後ウェルズリー侯爵に嫁がせる方法でございます。
もう一手は、臣籍降下した王族と貴族の間に生まれた娘のうち、性根のよさそうなものを陛下の養女とし、ウェルズリー侯爵に嫁がせる方法でございます」
「くぅ!
全てお前の言う通り後知恵だな!」
「はい、その通りでございます」
「賢しく諌言するのなら、余が謝らずに済むよき方法を考えてみよ!」
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