第24話

「アレクサンダー様、兵力と軍資金の方は大丈夫ですか?」


「ああ、大公の地位は役に立つよ。

 サンケンブリッジ王国から切り取った領地の半分を、軍に加わった者にわけあたえると通達したら、王国中から希望者が殺到したよ。

 それと名誉男爵の地位欲しさに多くの軍役金が集まったよ。

 これで何の心配もなくなったよ」


 私は常にアレクサンダー様の側にいます。

 愛しあう夫婦なら普通の事ですが、貴族は別です。

 政略結婚が普通の貴族は、子作りの時だけ顔をあわせて、それ以外はそれぞれ勝手にしている夫婦が多いのです。

 下級貴族の場合は、ごくまれに相思相愛の夫婦もいますが、そんな夫婦も戦場まで一緒という事はありません。


 私は少しでもアレクサンダー様の側にいたいのです。

 アレクサンダー様との絆を深めたいのです。

 それにはアレクサンダー様の側にいて当然の能力が必要になります。

 政務中も側にいるためには、政務能力が必要になります。


 基礎的な知識は、幼い頃に三人で学びました。

 しかし実践的な経験はありません。

 台所領が与えられなかった私には、経験を積むことができなかったのです。

 今思い出してもイヴリンに怒りを覚えます!


「気にしなくていいよ、ソフィア。

 実践不足はソフィアのせいではないからね。

 一緒に経験を積めばいいのだよ。 

 ウェルズリー侯爵領の統治は僕も手伝うから、それで経験を積めばいいよ。

 現場で働く人間も、うちの家臣に手伝わせるから、気にしなくていいよ」


 アレクサンダー様は優しいです。

 ウェルズリー城にいた家臣のほとんどが死んでしまっています。

 地方のいた代官や村長が生きているので、直ぐに統治が崩壊するわけではありませんが、領主の命令を地方に行き渡させるのは難しくなります。

 不正のチェックもできなくなります。

 オールトン侯爵家から優秀な官僚を派遣してもらえるなら、直ぐに立ち直れるかもしれません。


 生粋の貴族なら、オールトン侯爵家のウェルズリー侯爵家乗っ取りだと考えるでしょうが、むしろ私には望むところです。

 私はウェルズリー侯爵になってオールトン侯爵家と対抗したいわけではなく、アレクサンダー様の本当の妻になりたいのです。

 形だけの妻ではなく、心から結ばれた妻になりたいのです!

 ウェルズリー侯爵家がオールトン侯爵家に併合されても構わないのです。


 ですが、それでは、ウェルズリー侯爵の名跡を失ってしまいます。

 私がまだきらめていない、アレクサンダー様の子供を生むという理想が実現できるのなら、ウェルズリー侯爵の名跡を失うわけにはいきません。

 長男に大公位を継がせ、次男にオールトン侯爵家を継がせます。

 ウェルズリー侯爵家は三男に継がせばいいのです。

 四男以下には新たな伯爵家を創設してあげればいいのです。

 そのためにも、なんとしてでもサンケンブリッジ王国から領地を切り取ります!

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