第23話

 いけません!

 しっかりとしなければいけません!

 私はアレクサンダー様の妻なのです。

 ようやく。

 そう、ようやくともに戦場に立つ戦友となれたのです。

 命を預けあった関係になれたのです。

 単なる情欲の相手ではないのです。

 まあ、本当に妻になりたいという想いは捨てていませんが……

 それはこれからの努力です。

 諦めずに努力を続けます。

 

 足手まといになるわけにはいかないのです!

 アレクサンダー様の可能性を邪魔するわけにはいきません。

 アレクサンダー様は、サンケンブリッジ王家に主家を変える事も、視野に入れてられます。

 私が王族の地位に魅かれている態度を見せれば、命懸けで戦った私の事を慮って、不利な条件を受け入れてしまうかもしれません。


「アレクサンダー様!

 私の事は考えないでください!

 私はアレクサンダー様の妻でございます。

 オールトン侯爵家の嫁いだ嫁でございます。

 将来のオールトン侯爵夫人として、家の不利になるわけにはまいりません。

 断固とした態度をお願いいたします」


 アレクサンダー様が嬉しそうな表情を私に向けてくださいました。

 ああ、一緒に戦ってよかった。

 今日だけで何度同じことを想ったでしょうか。

 このようなアレクサンダー様の表情は、庇っていただいていた頃には見せていただけなかった表情です。

 この表情を受けべさせることができるようになった自分を、誇る気持ちさえ湧いてきます。


 王太子は驚愕の表情を浮かべています。

 私がここまで口にすると思っていなかったのでしょうか?

 私が戦場にまで出たことは聞いていたはずです。

 ならばこれくらいの事は予測しておくべきです。

 王太子も大した能力ではないなのかもしれません。


「分かった。

 大公独自の爵位任命権を与えよう。

 だが領地は自分の領地を分与するんだ。

 それと分かっていると思うが、二重爵位は認めないからな。

 アナンデール王家に仕える貴族士族に、大公が爵位を与えることは認めない。

 それは分かってるな?」


「分かっていますよ。

 ですが改めて確認しておきますが、今まで通り、部屋住みが仕官してきた場合は、その者に爵位を与える事は構わないのですね。

 軍役や軍資金を負担してくれた者に、爵位を与える事は構わないのですね?」


 よかった。

 やせ我慢をして本当によかった。

 アレクサンダー様が強気で交渉されています。

 王家は今までも、軍役や軍資金を負担してくれた平民に、名誉的な徒士や騎士の地位を与えてきました。

 貴族たちも同じです。

 ですが大公が、男爵以上の名誉貴族位を与えられるのなら、苦しい財政状態を一変させるほどの、莫大な寄付金を手に入れられるかもしれません。

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