第22話アレクサンダー視点

 腹立たしい。

 本当に腹立たしい。

 今さら何を言っているんだ!

 身勝手にもほどがある。

 王家王国のやり方は絶対に許せない。

 

 許せないが、このソフィアの姿を見れば、私情は抑えないといけない。

 容姿に関係なく王族位を保証すると言われ。

 子供が平民姿に生まれても保証すると言われ。

 喜びに崩れ落ちるソフィアの姿を見れば、自分が吐いた言葉も飲み込むしかない。


「それで全てですか?

 王太子殿下!」


 この一言で終わりだ。

 最後の要求だ。

 具体的な要求などしない。

 サンケンブリッジ王国でも当然差別があるはずだ。

 ソフィアとその子供に対する王族待遇などは、とても認められないだろう。

 特に大半の戦力を失ったウェルズリー侯爵家には配慮などはしないだろう。


「終わりではない。

 今までのは個人に対する詫びであり褒賞だ。

 ウェルズリー侯爵家とオールトン侯爵家の連合軍に対する褒美を与える。

 と言っても王家王国の財源にも限りがある。

 そこで切り取り勝手というのはどうだろう?

 ウェルズリー侯爵家とオールトン侯爵家が、敵国、サンケンブリッジ王国から切り取った領地や権限に関しては、王家が要求する事はなにもない。

 すべてウェルズリー侯爵家とオールトン侯爵家のモノとすればいい。

 それと切り取った領地に関しては、ウェルズリー侯爵家とオールトン侯爵家以外の家名を名乗っていい。

 アレクサンダー卿とソフィア卿の子供、たとえそれが養子であろうと、大公を名乗ることを許そう。

 分離独立は認められないが、ある程度の自治権は認めよう。

 それでどうだろうか?」


 汚い遣り口だな。

 だが的確な方法でもある。

 王家は全く兵力も軍資金も使うことなく、影響力を広げ事ができる。

 領地を拡大することができる。

 大公は名乗れても、サンケンブリッジ王国の領地を切り取った以上、アナンデール王国と敵対する事はできないのだ。

 分離独立など無理に決まっている。


 だが我々にも全く利点がないわけではない。

 やり方次第では強力な武器になる。

 だがそのためには確認しておかなければならないことがある。


「王太子殿下。

 その砂上の楼閣のような大公位ですが、独自の爵位を与える事はできるのですか?

 その権限がないようなら、何の恩賞にもなりませんね。

 むしろサンケンブリッジ王国との和平を妨げるモノです。

 私としては、サンケンブリッジ王国に、ソフィア卿の王族待遇を要求するつもりなのですよ。

 アナンデール王家には色々と恨みがありますからね。

 サンケンブリッジ王国が同じ条件を認めてくれるのなら、忠誠を捧げる相手を変えてもいいと思っているのですよ」


 さて、どう返事しますか、ウィリアム王太子殿下!

 

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