第7話
「よく来てくださいました、ウィリアム王太子殿下。
今日はどのようなご用件でしょうか?」
「急にすまなかったな、学院長。
どうしても調べなければいけない事があってな。
非礼を承知で無理を言わせてもらった」
私達の急な訪問にも、大陸連合魔法学院の学院長は笑顔で出迎えてくれました。
王太子殿下も笑顔で話されています。
まあ、内心の思いは違うのでしょうが、これが王侯貴族というのもです。
右手で互いの手を握り笑顔を浮かべながら、左手に短剣を持っているのです。
「さようでございましたか。
いったいどのような調べ物でしょうか?
私にわかる範囲でしたら、直ぐに返答させていただきますが?」
「ああ、そうしてもらえれば助かる。
だがその前に紹介させてくれ。
ウェルズリー侯爵令嬢ソフィアだ。
私の従妹でもある」
「え?
そんな!
そんなわけが。
あ?
だが、でも、まさか!」
「どうやら思い当たることがあるようだな。
包み隠さず全てを話してもらおうか。
私も学院長を拷問したくはない」
学院長がとても驚いています。
それも当然でしょう。
私の容姿は、誰がどこから見ても平民です。
でも服装だけは、侯爵令嬢に、いえ、王女に相応しい華美な服装です。
学院長は、私の事を王太子殿下の愛人だと思っていたのでしょう。
だから挨拶もせず無視していたのです。
ですが、王太子殿下が私の正体を話されました。
聞いた当初の、常識との乖離に驚いた様子はいつもの事です。
私が何度も何度も経験した反応です。
ですがその後の反応は初めてのモノです。
平民の容姿で魔力を持っている事例を知っている反応です。
私は無意識に一歩前に出てしまいました。
手から血がにじむほど、両手を強く握りしめてしまいました。
「拷問などという野蛮な言葉を口にしないでください。
そのような事をされなくても、ちゃんと全て話しますよ。
私にとっては、特に秘密にするような事ではありません。
秘密にしたくなるのは、ウィリアム王太子殿下の方でしょう」
「なるほど、それほど珍しく大きな問題だという事ですね。
公表するかしないかは、我が国が判断します。
事実を教えていただきましょう」
なにか、とても怖くなりました。
今まで以上に酷いことになってしまうのでしょうか?
このまま大魔境に戻った方がいいのではないでしょうか?
その方が、心穏やかに平和に暮らせるのではないでしょうか?
「では話させてもらいましょう。
普通では絶対に魔力を持たないはずの黒髪黒瞳の者が魔力を持つ。
これは神々に選ばれた特別な使徒の証です」
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