第8話

「神々の使徒だって?!

 それはいったいどういう存在なのだ?!」


 ウィリアム王太子殿下の驚愕も当然の話です。

 神々の使徒など聞いたこともない話です。

 私が知らないだけなら私の常識知らずとも思えますが、殿下が知らないのです。

 僅から間しか接していませんが、殿下が王太子として常に努力されてこられたのは、直ぐに分かりました。


 その殿下が知らないというのなら、この大陸のほとんどの人が知らない事だと思って間違いありません。

 ああ、私は妙に冷静ですね。

 あまりに衝撃的な話過ぎて、心が凍り付いてしまったのでしょう。

 この話を真正面から受け止めたら、心が激情で壊れてしまうかもしれませんから。


「端的に言えば、神々の寵愛を一身に受けた存在です。

 もう少し詳しく言えば、あまりに多くの神々から強力な魔力を与えられたため、魔力の色彩が干渉しあって、黒くなってしまうという事です。

 ウィリアム王太子殿下もご存じでしょう。

 一般的には、魔力が弱いほど黒に近い加護の色になり、魔力が強いほど鮮やかな加護の色になり、一定以上の魔力超えると白に近くなると。

 そして複数の魔力適性を受けた者が、加護の色を混ぜた色彩になると」


「知っている。

 その事は私も王侯貴族の常識として知っている。

 古い歴史を持つ王侯貴族は、それを基準に結婚相手を決めている。

 だがその常識でいえば、ソフィアの色彩は白になるのではないか?」


 確かにその通りです。

 学院長も、魔力が多いほど白に近くなると、今言ったではありませんか。

 言っている事が矛盾しています。

 間違いです。

 私が神々の使徒であるなんて、大間違いです。

 本当に私に神々の加護があるのなら、あのような虐待をされるわけがありません。


「それは並の聖者や聖女の事です。

 皇族を多少超える程度なら、真っ白になるでしょう。

 ですが使徒は違います。

 人が直接眼に見れる程度の魔力ではないのです。

 人の眼ではとらえきれない魔力なのですよ」


「では、なぜソフィアは王族程度の魔力なのですか?

 私が、いえ、今迄誰が測定しても、王族程度と判定されています。

 それほどの魔力があるのなら、測定魔道具の限界、皇族と判定されるはずです」


「ふむ。

 ここから先は私の想像です。

 それでも宜しいかな」


「かまいません。

 教えてください」


 教えてください!

 私も知りたいです!


「恐らくそれは、使徒を護るためでしょう。

 この千年、使徒どころか聖者も聖女も現れていません。

 何者かが神々の力を邪魔しているか、生まれて直ぐに見つけ出して殺しているのでしょう。

 使徒を護るために、守護者となるモノが現れるまで、封印されているのでしょう」

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