第6話

「どうだろうか、一緒に大陸連合魔法学院に行ってもらえないだろうか?」


 本当に単刀直入でした。

 単刀直入に話すとは前置きされましたが、ここまでとは思いませんでした。

 まあ、でも、そういう性格なのでしょう。

 そうでなければ、王太子ともあろう人が、たった一人でここに来ないですね。

 だったら私も気が楽です。

 思う事を全て話せます。


「そうか、苦しかっただろうね。

 今迄見て見ぬふりをしてきて悪かった。

 この通り、詫びる」


 驚きました。

 王太子殿下ともあろう方が、このような私に頭を下げてくださいます。

 私はこれでも人を見る眼があります。

 いえ、人の悪意や蔑みに敏感です。

 敏感にならなければいけない、いえ、なってしまう生い立ちです。

 その私から見て、王太子殿下には一切の悪意も蔑みをありません。

 こんな方に出会うのは、アレクサンダー様以来です。


「私をオールトン侯爵家に戻しに来られたのではないのですか?

 政略結婚を演じ続けろと言いに来られたのではないのですか?」


「それはあまりに酷過ぎるだろう。

 あのようなアレクサンダーとは、政略結婚も不可能だ。

 それよりも、もっと大切な事がある。

 貴族士族のありようの根本を変える重大な事だ」


 王太子殿下は全てを話してくださいました。

 聞いている私が心配になるくらいでした。

 このような事を口にしたら、廃嫡されるのではないかと心配です。

 それくらい今の貴族士族の常識とはかけ離れていました。

 魔力のある者が貴族であって、容姿はまったく関係ないのだと!

 私は、思わず泣いてしまいました。

 しゃくりあげるほど、号泣してしまいました。


「今直ぐ答えが出せないのなら、後日返事を返してくれればいい。

 私は毎日伝書魔を送る。

 その伝書魔に返事を託してくれればいい。

 王城にも馬鹿が多い。

 ソフィアからの伝書魔では邪魔されるかもしれない」


 王太子殿下の気遣いはとてもうれしかったです。

 私が傷つかないように、色々考えてくれています。

 私の気持ちを察して、オールトン侯爵家にもウェルズリー侯爵にも、戻らなくていいと言ってくださいました。

 なにより、全ての元凶は妹に甘い国王と、王族であった事を鼻にかけて、好き放題している母イヴリンだと断言してくれました。


 私は王太子殿下に惹かれてしまいました。

 アレクサンダー様に幻滅してしまった分、想いが強いです。

 私は、誰かにすがらないと、精神の安定を保てないのかもしれません。

 あまりにも酷い虐待を受けて育ち、アレクサンダー様だけを想い頼りにして生きてきたので、誰か思い頼る人が必要な人間になってしまったのかもしれません。

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