第18話
アレクサンダー様と私の魔力が相乗効果を生んだ攻撃は、父と側近の防御魔法を易々と打ち破り、一瞬で父たちを消し去りました。
私には何の感情も浮かびませんでした。
悲しみが浮かばないのは当然として、喜びも浮かばなかったのです。
幼い頃から、いえ、生まれてからずっと受けてきた仕打ちを考えれば、父たちをこの手で殺せたことに、喜びを感じてもおかしくはないのですが、路傍の石のを踏んで歩くときのように、何の感情も浮かばないのです。
私にとって父や家臣など、その程度の存在になっていたのです。
「腐ってもウェルズリー侯爵の居城。
一撃では消し去れなかったか。
だが大半の防御魔法は消し飛び、城本体も崩れかかっている。
これを好機にウェルズリー侯爵一族を皆殺しにし、領地を併合する。
過去共に戦った事は忘れろ。
味方を背後から襲う卑怯者として皆殺しにしろ!」
「「「「「おう!」」」」」
オールトン侯爵家の騎士や従士が、廃墟のようになったウェルズリー城に攻め込んでいきます。
寄騎の近隣小領主とその家臣も一緒です。
公爵家に相応しい魔力を持った一族の者が生き残っているかもしれません。
イヴリン王妹が生き残っている可能性は高いです。
ですが、先ほどの攻撃から身を護るために、魔力の大半を使っているはずです。
負傷している可能性も高いです。
愛人たちの戦いぶりを見れば、魔力は強くても、イヴリン王妹が的確な魔法と選択して戦えるとは思えません。
イヴリン王妹。
実の母ではあります。
ですが私を忌み嫌い虐め続けたモノです。
さっきは彼女の差し向けた愛人に殺されかけました。
私はどうするのが正解なのでしょうか?
ウェルズリー侯爵令嬢ではなく、オールトン侯爵家の次期当主夫人として、正しい行動をしなければなりません。
「アレクサンダー様。
アレクサンダー様の妻として。
オールトン侯爵家の次期当主夫人として。
味方を背後から襲わせたモノを許すわけにはいきません。
オールトン侯爵家が他家に侮られないために、私がこの手でイヴリン王妹を討ち取りたいと思います!
「……覚悟はできているようだね」
「はい!」
「分かった。
だが君の夫として、君だけに危険な事はさせられない。
後見して助太刀させてもらう。
いいね?」
「ありがとうございます!
とてもうれしいです!」
「味方を背後から襲わせた卑怯者は、襲われた本人ソフィアが自らの手で討ち取る!
夫として私が後見助太刀する!
イヴリン王妹を見つけたら殺さずに報告しろ!」
「「「「「おう!」」」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます