第17話

「おのれ、醜い平民ツラの味方をしおって!

 それでも貴族か!」


「一度も敵と戦わず、メス豚のベットで腰を振るだけの卑怯者が!」


 アレクサンダー様が私のために激怒してくださっています。

 普段温厚なアレクサンダー様とは思えない恐ろしいお顔です。

 やはり一緒に戦場に出てよかった。

 命を懸けてよかった。

 命を味方に預けて、背中を任せて戦う戦友というのは、男女の情愛とはまた別の絆があるのでしょう。


 私が本当に望むモノではありませんが、今までとは違う、父親や兄のような愛情とは違う絆を手に入れることができました。

 この絆を積み重ねることで、いつか、女として愛してもらえるようになるかもしれません。


 一番美しい時に、死に別れることになったアメリアとの思い出は、美化されてしまって、アレクサンダー様の心から消える事はないでしょう。

 実際に結婚していたら、嫌なところも見えてきて、私を振り向いてくださる可能性もありましたが、死んでしまった最愛の人は絶対に汚れる事などないのです。

 永遠にアレクサンダー様の心の中で美しいまま保たれてしまいます。


 そんなアメリカと争って、アレクサンダー様の心を得ることは不可能です。

 私は他の方法でアレクサンダー様の心を占めるしかないのです。

 その一つに方法として戦友になろうとしましたが、正解でした。

 アレクサンダー様の表情を見れば分かります。


「アレクサンダー様の手を煩わせる事はない!

 お前らのような下劣な連中は、我らで十分だ!

 死にさらせ!」


 アレクサンダー様の配下、オールトン侯爵家の騎士や従士が真っ先に突っ込んでいきます。

 彼らにしても、味方に後ろから襲われたことは許し難い事なのでしょう。

 烈火のごとく怒りに燃えて突っ込んでいきます。

 ほんの少し遅れて近隣小領主の当主や一族も突撃します。


 鎧袖一触とはこのことを言うのでしょう。

 イヴリンの愛人たちは、何の抵抗もできずに殺されました。

 魔力的には男爵や子爵の強さを持っているのでしょうが、一度も実戦に出ることなく、安全な後方で酒色にふけっていた卑怯者です。

 的確な魔法を使えずに殺されました。


「まて!

 待ってくれ、アレクサンダー殿!

 儂は知らなかったのだ!

 イヴリンが勝手にやった事なのだ!」


「今更遅い!

 愛人が殺されてから出てくるなど、謀略に加担していたとしか思えん!

 卑怯な売国奴はこの場で死ね!」


 アレクサンダー様が、オールトン城を焼き滅ぼすほどの魔法を、オールトン侯爵と侯爵と一緒に出てきた家臣たちに叩きつけます。

 私も魔法を同調させました。

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