第9話

 戦争です!

 血で血を洗う戦いです!

 父であろうと母であろうと関係ありません。

 人類全てを殺してでも、アレクサンダー様を護ってみせます。

 アレクサンダー様に褒めてもらいたくて、寝食を忘れて学んだ全てを出し尽くして、戦い抜いてみせます。


「ソフィア様。

 お怒りはごもっともですが、アレクサンダー様が大切に思われている事を聞かれないと、あとで後悔することになるかもしれません。

 あちらでゆっくりと話し合われてください。

 痴れ者どもの片づけは我々でやっておきます」


 見届人のクロエが冷静に助言してくれます。

 年齢の分だけ修羅場を経験しているのか、私が殺したオールトン侯爵家のモノたちが転がっているのに、全く動揺していません。

 もう一人の見届人とは経験値が違うのでしょう。

 でも、本当にいい助言をしてくれました。


「アレクサンダー様、こちらでゆっくり話させてください。

 よろしいですか?」


「ああ、ありがとう。

 あれほどソフィアを傷つけた私を護ってくれたんだね。

 すまない、ありがとう。

 詫びとお礼の言葉しか浮かばない」


「いえ、いいのです。

 もう、いいのです。

 私はアレクサンダー様さえいてくださればいいのです」


 アレクサンダー様と私は色々話しあいました。

 二人ではどうしようもないことが多すぎますが、私にとって大切なのはアレクサンダー様だけですから、他の事はアレクサンダー様の望む通りにしますとお伝えしました。


 アレクサンダー様はお優しい方ですから、私への責任感から、結婚すると約束してくださいました。

 最悪アレクサンダー様さえ生きていてくださればいいとは思っていますが、側にいてくださるのなら、うれしいに決まっています。

 身勝手なようですが、アレクサンダー様の責任感につけ込んで、結婚したいと思ってしまうのです。


 ですが、同時に、アレクサンダー様は、オールトン侯爵家の次期当主としての責任感を持っておられます。

 アナンデール王家に仕える貴族として、忠誠心と責任感を持っておられます。

 だからこそ苦悩されておられるのです。

 情けないことですが、私にはそれを取り除いて差し上げるだけの、知恵も能力もありません。


「恐れながらひと言よろしいですか?」


 アレクサンダー様と二人黙り込んでしまっていると、慈母のような微笑みを浮かべたクロエが話しかけてきました。

 なにか助言してくれるのでしょうか?

 人生経験豊富なクロエなら、私たちが思いつかないようなアイデアがあるのかもしれません。

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