第9話 講義ノート
今、俺は自宅に戻っている。この状態は昨日までと、まったく変わっていない。誰にも会わなければ、ずっと異変に気づかなかったかもしれない。まあ、鏡を見てしまうから、否応なしに受け入れ難い現実を知ってしまうか。
しかし、長い1日だった。正確に言えば、あと2時間は11月29日なんだが……
そこまで俺の思考が進むと次は謎に挑戦するしかなくなってきた。今の俺は薄々気がついている。人が入れ替わるなんて、あり得ないなと。
仮に宇宙からの侵略者が地球にやって来て、俺たちと入れ替わるとしたら、きっと俺たちに分からないようにするだろう。だが俺が今日見て来たものは、その逆だった。言われなかったら別人かと思うぐらい違う容貌に変わっている人さえいた。例えば、立花先生だ。
それなのに、いしだっちや、いっちゃんたちは先生が今日、俺が見た通りの先生の容貌になるまでの経緯を知っていたようだった。いや、あの様子だとテレビとかで、日本中、もしかしたら世界中で先生は20代前半のかわいい女性の姿として認知されているのだろう。
そうなると、これも信じられない考えなんだが、もしかして今いるここは、俺がずっと生きてきた時代のままであり、同じ場所でもある東京都
だって、俺自身10歳も若返ってるのに、いしだっち達は、俺の容貌が前からそうだったように全然気にしてなかったじゃないか。俺たちの容貌が昨日までと全然違うように変わったと思ってるのは、どうやら俺だけなのかもしれない。だが俺の記憶は間違ってないのも事実のはずだ。ああ分からん。何か良い方法はないものか。
そうだ!
その時、俺は思い出した。この現象を解き明かすのには去年の立花先生の講義、「多次元変動説」の講義ノートが役に立つはずだと思ったからだ。
たしか、机の引き出しにしまってあったはずだが……
俺は、ここに解決の糸口があると思いつづけながら、講義ノートを探すのだった。
第9話 終わり
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