第37話 頼みの綱

 龍虎先生のマンション前にタクシーが着いたので、俺たち3人はタクシーを降りた。


 俺たちも先生の部屋に入った時、先生が、

「オートロックのマンションなのに、シュレッダーたちがボクの部屋まで簡単に侵入して来れるなんて、どうしたらいいの? 」と聞くから、

「多分、ピッキング防止用の鍵なんで、ドアーを無理矢理バールでこじ開けたんだろうな? バールでのこじ開け防止の金具をドアー側に設置してもらうといいよ」とヒダリンがアドバイスしてくれた。


 俺がヒダリンに、

「やっぱり、リンゴ ジャパンに戻るのか? 」

 って聞いたら、

「私たちの元の世界に戻れるかが問題なんだけど、できれば私物も打ち捨てて、この世界では戻らないで済ましたいな。だけど、ここへ来た方法では元の世界に戻るのは不可能だし、困った」と答え、

 俺が、

「もしかしたら、ミラクル研究所の皆狂みなくる博士なら、タイムマシンについて手掛かりを持ってるようなことを言ってた」という話をした。

 それで、俺とヒダリンは早速、明日、ミラクル研究所に行ってみることに決めた。

 安易だが、いまや皆狂博士が頼みの綱になっていた。


 そういう話をしている間に、龍虎先生は作り置きしてた、お手製のカレーを作ってくれたから、みんなで食事ができたのだ。

 そして、いけない事だけど、先生も明日は仮病を使って大学を休むことにして、俺たちとミラクル研究所に行くことになった。


 俺は、先生たちが元の世界に戻りたい気持ちがよく分かるから、そういう事にした。それに俺にとっての元の世界は、今のところ危機的状況でもないからな。


 食欲も満たしたら、みんな睡魔に襲われたので、先生は自分のベットに、俺たちはソファーをベッド代わりに使わせてもらい、寝ることにした。

 俺とヒダリンは遊覧船会社が急遽用意した山登り系の服のまま横たわることにした。ずぶ濡れになった服は、明後日あさってぐらいに先生の部屋にクリーニングされて届けられることになっていたし。


 俺と先生は、すぐに寝息をたててしまったが、ヒダリンは横になると、なかなか眠れなくなった。

(吉本先生は、あの時のことも全然記憶にないんだなあ。私にとっては、一番大切な思い出なのになあ…… )

 ヒダリンは、15年前のことを思い出していた。


 第37話 終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る