第40話 イメージスクリーン・システム
博士の言葉は、大いにみんなを勇気づけたが、龍虎先生だけが何かを考えている表情をしていた。そして、考えがまとまった風にして言った。
「博士、ボク達は今、普段の生活を中断した状態なんです。ヒダリンなんか、リンゴ ジャパンの本拠がある六本木ヒルズに自分の住まいがあるのに、ボクらと行動を共にしています。
だから、一刻も早く元の世界に戻りたいはずです。なので、明日とは言わずに今から元の世界へ行くための時空の合流点を特定する装置の開発を行えないでしょうか?
そのためには、ボク達は、出来る限りの協力をしますよ」
その言葉に博士は腕組みをしたが、やがて決意して言った。
「そうじゃの。よし!分かった。それじゃあ、ワシの考えを先ず言うので、それに同意してくれるのなら、今から早速行動しよう」
博士は、みんなの顔を見回して、さらに続けた。
「これは最近になって閃いた構想なんじゃが、まず、自分の潜在意識にあるイメージをスクリーンに映して、グループのメンバー全員に共有してもらうんじゃ。すると、それによって変化した他のメンバーの潜在意識のイメージも次々とスクリーンに映す、という事を繰り返すのじゃ。そうする事で飛躍的に新たな装置の開発を推し進めるシステムなんじゃ。
これをワシは、イメージスクリーン・システムと名付けた。
このシステムの具体的な内容は、
ジェット戦闘機のパイロットのヘルメットと同じような形状の装置をかぶってもらって、まず、特に知りたいことを質問する。
次に、装置の装着者は、質問に答えながら、その内容から潜在意識にあるものをイメージする。
すると、装置に装着者の脳波が検知される。
さらに映像化用コンピュータが、その脳波をもとに、人間が目で見えたものを脳内で映像化するようにイメージ映像をヘルメットのバイザーに映す。
装着者は、バイザーに映った映像の内、特に自分の意思で関心のあるものに焦点を合わせる。
精密カメラがその装着者の瞳を自動撮影する。
その映像がスクリーンに映されて、装着者が質問を受けて、最も関心のある映像を全員が共有する。
ざっと言えば、こんな感じじゃ。
このシステムを作るためには、超高純度(純度99.999999999% → 小数点の左側がイレブンで右側がナインなんで、イレブン・ナインと呼ばれる)の単結晶シリコンを最低100グラム製造するのと、それを原料にした半導体を30種類製造して、やっと映像化用に適したレベル5の超集積回路を設計した通りに作れるようになる。
大変じゃが、製造設備は地下にあるので、やってみるかの?
どうじゃ? 」
博士の頭の中には、一体どれぐらいのシステム構築に必要な部品が、イメージされてるのか、その装置でスクリーンに投影してもらいたいと俺は思ったが、それをまず作るのが先決だった。
龍虎先生は、さすがに博士の言葉を理解してるようで、
「みんな! やろうよ! まずは、これからなんだけどね」
と明るく言った。
またもや、例のウインクもどきをして。
第40話 終わり
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