第39話 時空の合流点
翌朝、俺たち3人は起きるとともに
龍虎先生は、大学に発熱だと偽っての欠勤の電話をしてから、
「あっ、そうだ。皆狂博士にもアポイントの電話しとこっと」と宇宙物理学つながりで知っていたミラクル研究社へ電話した。すぐに助手の翔青という若い男の声の人から皆狂博士は今日は一日、研究所にいることを告げられた。
「よし。これでオッケーね」
と言って、先生も軽やかに身支度を整え始めた。
そして、参宮橋の駅に10時過ぎに着いたのだが、俺は考えてみれば商店街の電器屋までしか来てなかったので、駅からの風景は初めて見る物だった。だけど、龍虎先生が iPhone の地図アプリからミラクル研究所を検索して、俺の見覚えのあるパラボラアンテナが屋上に備え付けられた3階建ての建物にたどり着くことができた。
インターホンを押すと、すぐに若い男の声がした。
自動で開く門が開けられ、俺たちは若い男のいる入り口へと向かった。半ばほどまで進んであと10メートルぐらいになった時、若い男は叫んだ。
「茂蔵さん! 茂蔵さんじゃないですか!
無事だったのですね! でも、今まで、なんで連絡してくれなかったんですか? 」
俺は一瞬、(何を言ってるんだ翔青君は? 昨日、再会してたじゃないか? )
と思ったが、この世界が昨日、翔青と再会した世界と違うことに気がついて、
「ちょっと、複雑な話になるんで、まずは皆狂博士と一緒に俺たちの話を聞いてくれ」
と言って中に入らせてもらった。
俺たちは、すぐに博士の座っている机の隣にある応接室に通された。俺たちが座っていると、博士が間も無くして入って来て、
「立花先生、お久しぶりじゃの。相変わらず、かわいいのう」と普段の驚いたような目を笑顔で細くして言った。
「ほう! 理論的には理解しておったのじゃが、さすがのワシも風呂に入ってたら、裸で町中を駆け出すような話じゃのう」
と博士が言い、先生が笑顔で
「アルキメデスが浮力の原理を導いた時のようにですね!」と間髪入れずに言った。
「あはっ!アルキメデスの原理かあ」
とヒダリンも笑った。
重複するので省略したが、こうして俺たちは、異次元から来たいきさつを全部、話した。博士も、そうやって驚いて見せたが全面的に俺たちの話を信じてくれた。
そして話してるうちに、どうやらこの世界では俺はまだ、このミラクル研究社に来ていなかったのを知った。
というのも、翔青は博士から言われて、龍虎先生の研究会の会場に俺が来る可能性に賭けて、これまで二度も張り込みをしたのに空振りに終わっていたので、昨日は私用もあって行かなかったのだ。
さて、いよいよ話は核心に迫った。
「問題は、時空の合流点をどうやって見つけるかだと思っていたが……
それは、君たちの話からラベンダーに含まれる何らかの成分を体内に蓄積させれば、見つけられるようじゃの。
じゃから、それよりも、どうやってたくさん見える時空の合流点から、元の世界にピンポイントで戻れる合流点を特定するかなんじゃな」
博士は、しばらく目をつぶって考え込んだが、
「まあ、当たって砕けろじゃ。明日から忙しくなるが、覚悟しといてもらおう」
と言って高らかに笑った。
第39話 終わり
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