とんでも異次元
湯呂 潤九 €’junk〜
第1話 アバウトな俺
俺って、ほとんどがアバウトなのに、たまに繊細なとこがあるんだよな。いつも通り観察力0で、気が付かんかったら良かったのに。だが気がついたもんは、しょうがないと思いたい。
しかし…… えらいところで大幅に変わってるぜ、今いるとこって。俺が半世紀以上も生きてた世界とは、ある一点に関して、想像を絶する違いがあるんだよなあ。
それは、いくら俺でも気にしないわけには、いかない!
でも、どうして俺だけが、こんな世界に迷いこんだんだ。おんなじ目に遭ってる奴って他にいないのか?
いたら返事してほしい!
この世界に迷いこんだ当初は、まったく違いに気がつかなかった。いや、たまたまだけど、ちょっと違和感があった。俺の電波時計は電波を拾えなくなってて、1日に2秒ほど進んでしまう。でも、2秒ぐらい合わせる気にならんから、いつも正常に作動してる据え置きの電波時計と見比べてから、家を出るようにしてる。
その日もそうだった。いや、正確に言えばギリギリまで寝ていたから、髭剃って歯を磨いて、飯も食わずに慌てて出て行ったんだ。
そして、それは起こった。
車を走らせ、山道のカーブを曲がりっぱな、突然白い猫が飛び出した。俺は反射的にハンドルでかわしながら、ブレーキを踏んだ。だが、そう上手くいくわけがない。案の定、左カーブの山肌に激突した。それと同時に今まで味わったことのない衝撃を感じた。
俺はハンドルを握ったまま、しばらく呆然としていた。絶対、頭がフロントガラスに激突すると思ってた。だけど、なぜか目の前にオレンジ色の強烈な光があって、俺が前方に飛び出しそうになる動きも含めて、すべての動きが、まるで時間が止まったように止まったのだ。夢じゃない。
それでも俺は数秒で自分を取り戻した。そして最初に腕時計を見たのだ。(あれ? 7時58分だって? えっ? …… たしか、事故る直前にラジオから8時です! って聞いたぞ! )
それはおかしい。俺は今朝、腕時計が自宅の電波時計より4秒進んでいたのを確認している。たとえ確認してなかったとしても、さっき言った通り、いつも遅れたりせずに2秒づつ進むのだし。
そのことは、変だったけど、なんとか車は大丈夫なので(それも不思議だぜ、ホントは)、職場へと急いだのだった。
とりあえず聞き間違いだと思うことにした俺だった。
そういうとこは、アバウトな俺が活動してる。
この世界が、とんでもないとこで、俺がいた世界と変わってることは、しだいに明かされることになるが、この時点では俺はまったく、いつもの俺だった。
それは、確かだ。
第1話 終わり
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