第17話 小悪魔ヒダリン
俺の斜め後方の席にいた25、6歳に見える小悪魔のようにかわいいが、トゲのありそうな女が、頬杖をつきながらストローでクリームアイスオーレを飲んでいた。彼女はずっと俺たちの様子を見ていたようで、その愛らしい唇からストローを離すと、誰も聞こえないような小声でつぶやいた。
「ふーん。あいつら、好き同士なのかー… アキレスさま、おかわいそうに」
もしも女好きのナンパ目的の男たちが彼女を見たら、絶好のターゲットにしていただろう。というのも抜群のルックスだけでなく、彼女が身にまとっている服装が12月だというのに、かなりの露出度だからだ。
俺のファッションセンスでは説明しづらいのだが、上半身は多分ノーブラで、白い肌を覆っているのは、黒い絹のような薄い布のインナーが1枚だけだ。その形は肌が見える分で説明すると、胸元は大きくVネック状に露出していて、よく見ると左右が浴衣のように合わさっている。それも立ち上がると、おへそが見えるぐらい短い丈だ。あと、袖もなくタンクトップのようになってるが、肘の辺りの約10センチから15センチだけが袖のようになってる。その部分は2枚のパーツが左右とも肘の外側 ( 後ろでなくて横 ) を紐でくくって袖状になってるのだ。しかも内側は脇から肘まであるが、外側は肘の辺りの6センチぐらいになってるので、正面から見れば肘の辺りの6センチの正方形の上に三角定規が、くっついた形に見える。そんな黒一色の一瞬シャツに見える代物だ。そして首には黒の鎖状のチョウカーをつけている。
下半身は黒のレザーのショートパンツで、すらっとした白い脚が丸見えだろう。さらにショートパンツの裾下2センチぐらいの所に黒のレザーで幅2センチぐらいの帯状になってる物が、おそらく下着からつながってるガーターベルトのようなベルトとつながっていて、白い太もものアクセントになっている。あと、胸元に届くぐらいのダークブラウンのサラッとしたロングヘアーと、くっきりとした茶色のカラーコンタクトの瞳といったところで、まさに小悪魔と呼べるファッションだ。
この時、俺たちは彼女に見張られているとは、まったく知らなかった。彼女は研究会のあったビルを俺たちが出てくる所から尾行していた。そして、俺は彼女のことを知っていた。いや、正確には俺の飛んでしまってる記憶の中で知ってるのだが…
その記憶の中によると彼女の名は、飛騨りんごと言い、彼女の所属するリンゴ ジャパン支社ではヒダリンと呼ばれていたのを知っていたのだ。
第17話 終わり
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