第18話 リンゴ ジャパン支社

ここは六本木ヒルズの高速エレベーター前だ。この最上階にリンゴ ジャパン支社の本拠がある。

真っ白のフェイクファーのロングコートに身を包んだ、あの飛騨りんごが上層階に上がるエレベーターを待っていた。彼女は大の動物好きで、毛皮の使用には反対しているところが意外な一面ではあった。

( アキレス様に報告したら、こんなつまらない任務は、誰か他の者にやらせると、きっぱり言うぞ ) 彼女は俺たちの様子を見せられて、うんざりしていた。

( あーあ。なんで、アキレス様は、わたしの気持ちをわかってくれないんだ。くそっ )


ここからは、英語での会話になる→

「おお。ヒダリンか。早かったな」広い机の真ん中で書類に目を通していたアキレスが、開けたドアーの前に立ってるりんごを見て言った。そして、りんごから報告を聞き終わって

「なぜだ! なぜ、いまいましい、そいつの家を突き止めなかったのだ! 」と語気を荒げて言った。

「男の方の家など、いつでも特定できます。もう、こんなことは、他の者にやらせてください」と言うと、りんごはそっぽを向いた。アキレスは、いつも忠実なヒダリンが自分の命令を聞かないことを不思議に思ったが、

「わかった。それでは保安室長を呼ぶので待て。さっきの男の画像を見せて俺の前で引き継げ」と言った。


すぐに保安室長はやって来た。

「お呼びですか。アキレス様」

アキレスは、りんごがイースタで俺たちを隠し撮りした画像を彼に見せて言った。

「こいつの身元を調べて、こいつの行動を見張ってもらいたい」

画像を見た保安室長は、「あっ! この男! 」と思わず叫んだ。

「どうしたのだ? 」アキレスは聞いた。

「この男は忘れもしない去年の5月26日に我がリンゴ ジャパン支社の地下秘密工場の最高機密を盗んだ産業スパイです。間違いありません! 」と言った。

「おお! あの時の… お前たちが50人がかりで追跡しながら、逃げられたスパイか? 」アキレスの声に保安室長も

「はい! 間違いありません。一体どこで! この写真はどこで撮ったのですか? 」と保安室長の問いに今度は、りんごが答えた。

「2時間前に渋谷、吉本ホールの向かいのイースタにいるところを撮った。ふむ。こいつが、お前らが本社から低脳呼ばわりされた張本人か。おもしろい」りんごは、にわかに闘志が湧いてくるのを感じて言った。

「アキレス様。先ほどのお願いは、撤回します。このヒダリンが、奴をアキレス様の前に引きづり出してご覧に入れましょう! 」

「そうか。オーケー」アキレスも不敵な笑いをしながらそう言った。

第18話 終わり

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