第7話 龍虎先生からの招待状
だが俺は、結論を出したのもつかの間、それでは説明できない問題にぶつかった。
(俺も入れ替わっただって? そんなら、この俺は誰なんだ? )
俺は考えるのが、めんどくさくなってやめようとしたが、やっぱりどうしても考えてしまう。そんな状態で事務所から給油エリアの方へ行った。誰かが俺を見たら、こいつ、何ボーッと突っ立ってるんだ? と思うだろうな。多分そんな状態だったんだろう。だから、あのアウディが俺がいる方にやって来ても気がつかなかった。
気がついたら俺の前に
「さっきは、ありがとう! お金払いに来ました! 」と元気な声をかけて、笑顔で対面してる美人さんがいた。
わっ、立花先生だ。
「伝票はマネジャーに引き継いでますので、呼んで来ます」
と言って俺は急いで事務所に走った。
(どうも俺は変だ。なんで照れてるんだ? 立花先生の顔をまともに見れなかった)
と自分の感情の変化に動揺しながら走っていた。
「いしだっち。立花先生が来ましたよ」
俺はただそれだけ言った。いしだっちは喜び勇んで先生の方に駆け寄った。俺は先生たちとは離れて、となりのレーンに素知らぬふりをして立っていた。めちゃ、先生の方が気になるのにな。
清算が終わったはずなのに、いしだっちは、まだ先生に何か話しかけているようだ。俺はなんかイライラした気持ちと俺もそばに行きたいという感情を押し殺して、となりのレーンで立っている。すると、俺の背後から誰かが近づいてくる気配を感じた。気配というより、あの忘れられない素敵な香りだった。
俺の目の前にジャーンという効果音が似合うように、先生が立っていた。先生は、ほんの1、2秒俺を見つめてからニコっと笑って、
「今度の日曜なんだけど、昼の1時から渋谷の会議施設でボクの会員さん向けの研究会があるんです。良かったら来てください! これ、招待状です」
と言って、俺に封筒を手渡してくれた。
「えっ、俺を招待してくれるのですか? 嬉しいですけど、なんでまた…… 」
「ボクは今、タレント教授として活動してるんだけど、ファンのみなさんのおかげで人気が出てきました。でも、プライベートなことでは、結構用心しなくてはいけなくなってて…… エンジンがかからなくなった時も、わざと男の声で電話したんです。そうじゃないと、そのあと面倒なことがよくあったから…… でも、君の対応は気に入ったなあ。無理にとは、言わないよ。ボクの講義を受けてくれてるから、良かったらと思ってる」
先生の説明は、こういった内容でも実に良くわかる!
「はい! 俺、行きます。喜んで! 」
俺は、すがすがしい気持ちでいっぱいになった。
こんな俺たちをいしだっちといっちゃんは、指をくわえて見ているようだったが……
第7話 終わり
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