第23話 最強ファイターへの道
「それじゃあ、俺のお爺さんのお爺さんが、伝説の剣士、吉村貫一郎なんですか? … でも、おかしい。俺の名は吉本だ。吉村じゃないんだけど… 」
博士は俺の疑問に答えた。
「それは、簡単じゃ。
ワシは、お前さん、吉本茂蔵を捜すために、吉村貫一郎の長男の足取りから追った。実は吉村貫一郎という名は新撰組に入隊した時の名前で、本名は嘉村権太郎 ( よしむら ごんたろう )だったが、盛岡藩を脱藩していたので変えていたようじゃ。
そして、史実に残ってるものとして、京都伏見にある御香宮 ( ごこうのみや ) 神社所蔵の戊辰東軍戦死者霊名簿に嘉村権太郎は、1868年正月の鳥羽・伏見の戦いで戦死したことが記載されていたので、そこからたどっていったのじゃ。
それからのワシは、盛岡で毎日捜しつづけ、1か月も掛かってやっと見つけたのじゃ。
その長男、お前さんにとっては、ひいお爺さんは、15歳の時 ( 1875年2月 ) に平民苗字必称義務令で苗字と名も改めていた。その名が、吉本 貫介じゃった。恐らく、盛岡藩を脱藩した父の新たな名、吉村を名乗りたかったが、さすがに、はばかられたのじゃろう」
そこまで聞いて、俺はそのあとを引き継ぐように言った。
「そうかー。その吉本 貫介さんの息子が、お爺さんの吉本 一蔵、その息子が俺の父さんの和三 ( かずみ ) なんだ! 」
「そうじゃ。そして、ちょうど2年前の12月にワシは茂蔵、お前さんが東京の稲城 ( いなぎし ) 市に住んでいることを突き止めたのじゃ」と博士は、ここで俺のことを茂蔵と呼んだ。おそらく俺に会ってからは、そう呼んでいたのだろう。俺もそれに違和感を感じなかったからだ。
「博士、俺は博士と会って何をやっていたんだ?その記憶は、戻らないだろうけど、またやり直すことは、できそうだと思うから」
その俺の言葉を待っていたかのように、博士は笑みをたたえて言った。
「ワシが茂蔵を何のために捜していたんだっけ? … 茂蔵、お前さんを最強ファイターにするためじゃよ」
最強ファイターという言葉を聞いた俺は、2年前、博士に会って俺が感じたことを想像した。それは今、俺が感じていることと同じだと思った。 ( なんか、分からんが、面白いじゃないか 。力がみなぎるようだ )
俺の体の中にあったものが、蘇ったようだ。
ここに至って博士は、俺の反応に確かな手応えを感じた。そして、それまでずっと二人の様子を見ていた翔青もホッとしたと同時に、喜びがあふれて来るのを感じていた。
第23話 終わり
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